予期せぬ火災のための消防用設備の消火器。私たちにとってとても身近なものでもありますが、設置をしている方たちはきちんと点検、整備を自身で行っていますか?点検を依頼した際は立ち会って状況を把握していますか?
消火器を設置していてもいざとなったときに使用できないのであれば意味がありません。点検や整備は有資格者が行う義務と決められています。
さらに消火器には使用期限というものも決められています。あなたの消火器の使用期限は切れてはいませんか?製造年などの適切なチェックも必要です。
この消火器自体の点検、期限のチェックなどは消防法で定められています。その詳細や点検の方法などをこれから説明しますので把握しておきましょう。
消火器に期限があることは知っていますか?
半永久的に使用できると思われている消火器ですが、実は使用期限があります。防災具や非常食の事を考えると保管がきくイメージではありますが、使用期限が設けられていて、もし期限が切れていた場合は交換しないといけません。
では、もし期限が切れていたらどのように対応したら良いのか、期限の見方などを説明します。
消火器の期限とは?
期限に関してですが、業務用消火器の場合は約10年、住宅用消火器は約5年とされています。前者は薬剤の詰め替えができますが、後者はできないため消火器ごと交換となることを知っておきましょう。ちなみに使用期限の明記はこんな感じで裏面のラベルに記されています。
引用元:日本消火器工業会
使用期限が切れていたらどうなるの?
過去の例として加圧式の消火器で破裂事故が発生したことがあります。その後、安全対策に関する報告書「老朽化消火器の破裂事故を踏まえた安全対策」が取りまとめられ、平成22年に消火器の規格及び消火器の点検基準等が改正されました。そこで①消火器に注意事項等についての表示の義務付け②消火器の点検において耐圧性能点検が導入された経緯があります。
現在主流になっている蓄圧式消火器での破裂事故の前例はありませんが、万が一の事故を未然に防ぐためにも、腐食、サビ、変形などが見られる消火器はすぐに適正な消火器に交換を行いましょう。
また、消防法では業務用消火器の点検義務はありますが、使用期限に関する規程はないので期限が切れている消火器を設置していても罰則はありません。しかし半年に一回の点検で異常がない場合に限ります。
業務用消火器の期限は10年となっていますがこれはあくまでも耐用年数であって寿命ではありません。先程も言ったような外見の変形などが見られたら交換するようにしましょう。
それと保管方法も大事です。直射日光による高温、湿度の高い部屋に保管してはいけませんので、必要であれば消火器を格納箱に入れるなどで対策するようにしましょう。
消火器の点検をきちんとしていますか?
期限をチェック、そして消火器本体が問題ないかの点検も義務となっています。その点検方法はみなさん知っていますか?その方法や、消防法で定められているしなくてはいけないことについて説明していきます。
消火器の点検方法を大公開!きちんとチェックしましょう!
業務用消火器、住宅用消火器どちらにもある、蓄圧式消火器の点検方法を手順を追って説明していきたいと思います。
①本体、容器の確認をしましょう
点検方法
目で見て確認しましょう。
判定方法
消火薬剤が漏れていないか、本体の変形、腐食やサビがないかで判定します。
点検の際のポイント
サビの進行具合が酷く腐食している場合は速やかに処分、交換しましょう。金属類にある孔食は見つけるのが困難ですが、孔食があれば事故の原因になりやすいので注意して確認しましょう。キャップの変形やネジ山がないものなども交換の対象となります。
②安全栓の封の確認をしましょう
点検方法
目で見て確認しましょう。
判定方法
キズなどがないか、確実に取り付けられているかで判定します。
点検の際のポイント
安全栓の封は、黄色い安全栓のロックが掛かっている部分のことを言います。取れかけていないかなどを実際に触れてチェックするようにしましょう。
③安全栓の確認をしましょう
点検方法
目で見て確認しましょう。
判定方法
安全栓が外れていないか、確実についているか、キズなどはないかで判定します。
点検の際のポイント
まず、安全栓のチェックの際はレバーに力をかけないよう注意しましょう。封印シールやロックが取れていたりした場合は一度使用している可能性もあるので、注意しましょう。
④押し金具、レバーなどの操作装置の確認をしましょう
点検方法
目で見て確認しましょう。
判定方法
確実についているか、キズや変形などはないかで判定します。
点検の際のポイント
上下のレバーの内側にサビや変形がないかをきちんとチェックしましょう。
⑤キャップの確認をしましょう
点検方法
目で見て確認、手で締める、付けるなどの確認をしましょう。
判定方法
強度による支障がないか、変形はないかなどで判定します。
点検の際のポイント
キズや腐食がないかをチェック、容器自体と確実に連結されているかをチェックしましょう。
⑥ホースの確認をしましょう
点検方法
目で見て確認、手で締める、付けるなどの確認をしましょう。
判定方法
変形やキズがないか、ホース内に詰まりがないか、本体ときちんと付いているかで判定します。
点検の際のポイント
ホース取り付けネジが緩んでないか、薬剤の漏れはないか、キズやヒビ、変形がないかをチェックしましょう。
⑦ノズル、ノズル栓、ホーンの確認をしましょう
点検方法
目で見て確認、手で締める、付けるなどの確認をしましょう。
判定方法
変形やキズがないか、内部に詰まりがないか、ちゃんとホースに付いているか、ノズル栓が付いているかで判定します。
点検の際のポイント
ノズル栓が外れていたら付け直す、詰まりがあった場合はその除去と、薬剤のチェックをしましょう。
⑧指示圧力計の確認をしましょう
点検方法
目で見て確認しましょう。
判定方法
変形やキズがないか、指示圧力値が緑色の範囲内であるかで判定します。
点検の際のポイント
指示圧力計の動作チェック、表示が緑色よりも下回っている場合は薬剤をチェックし、内部の漏れなどがないかチェックしましょう。
点検のあとは?
消防法でも定められているように、点検はある一定の期間内に行うことになっています。機器点検は6ヶ月に1回、総合点検は1年に1回。特定防火対象物も1年に1回、非特定防火対象物は3年に1回となっていて、結果報告を消防署長に提出しなければなりません。怠ると罰則が課せられる場合もあるので必ず提出しましょう。
消火器の点検の際に必要になるチェックシートは下記でも確認できるので参考にしてみてください。
消火器具点検票のダウンロードは……→ 日本消防設備安全センター
消火器の整備には資格が必要!
消火器だけではなく、オフィスや施設の消火栓やスプリンクラーなどの設置、整備や点検には資格が必要になってきます。有資格者のみが認められた点検になることを覚えておきましょう。
消防設備士について
消火器の設置、及び整備や点検に関しては「消防設備士」という資格が必要になってきます。この資格の保有者であれば消火器はもちろん、消火栓や火災報知機、スプリンクラーなどの設置や点検もできるようになります。
消防設備士に見てもらいながらであっても無資格者は点検の報告ができないことになっています。くれぐれも注意しましょう。試験の申し込みは下記サイトからできるので詳細について一度ご覧ください。
消防試験研究センター→ http://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/index.html
消火器の使い方を忘れていませんか?
消火器の設置をしても使用方法を忘れてしまっていては、いざという時に役立ちません。一度使用方法を教わった方も、まだ知らない方も、方法を簡単に説明していきます。
消火器の使用方法を今一度確認!
消火器の使用方法を簡単に手順を追って紹介していきます。
①火災の発生を確認、まずは周りの人に知らせましょう
決して一人だけでなんとかしようなどとは考えず、周りの人に知らせて協力を要請するようにしましょう。
②黄色の安全栓を抜く
消火対象物の約7~8メートル手前で消火器の黄色の安全栓を抜き、消火の準備をしましょう。
③ホースを消火対象物へ向ける
ホースを外し、消火対象物へホースを向けます。その際にホースの中腹部分を持ったり手前部分を持ったりせず、きちんと先を持つように注意しましょう。
④レバーを強く握り放射
ホースを持ちレバーを握り、消火薬剤を放射しましょう。いきなり対象物に放射するのではなく、手前や周りから放射していくと上手く消火することができます。
また消火器を使用する際は必ず逃げ道や逃げる手段があることを確認した後に使用しましょう。もしそうでない場合は使用をせず、避難することを最優先しましょう。
消火器はリサイクルを行っているので協力しましょう!
先程の点検や整備に関しても消防法で定められていましたが、この消火器の処分の方法も法で定められています。一般家庭ゴミなどでの処分はできないので注意しましょう。
消火器のリサイクル方法とは?
消火器に使用されているアルミなどはリサイクルができます。なんとその再資源化率は90%以上です。そのリサイクルの方法は非常に簡単なので把握しておきましょう。
まずは所有している消火器を確認しましょう
外国製の消火器、エアゾール式のものなどはリサイクルに出せないので確認しておきましょう。
処分方法を選択しましょう
リサイクルに出す方法として、引き取りに来てもらうか自分で引き渡しに行くかがあります。消火器を取り扱っている代理販売店や、消火器メーカーなどに問い合わせてみましょう。その後は業者がリサイクルセンターへ届けて再資源化します。そこで古い消火器から新しい消火器へと生まれ変わります。
リサイクルシールについて
現在販売されている消火器にはリサイクルシールというものが付属されていますが、昔のものにはついていません。消火器を処分する際に必要となるのできちんと保管しておくようにしましょう。リサイクルシールを持っていない方は、上記で紹介した代理販売店やメーカーにて購入するようにしましょう。
きちんとした消火器の点検と整備を、期限が切れたら交換を
今回は消火器の点検方法や、消防法の詳細などを説明してきました。本記事を見ていただけたら十分理解できると思いますので、点検を怠ったり、交換を忘れないように注意してください。
みなさんの周りで火災が起きないことを祈っていますが、万が一のためにきちんと防災対策をし、備えを充実させておいてください。