非常用発電機の導入で失敗しないためには、メーカー選びが重要です。メーカーごとに性能や対応力、強みが異なるため、特徴を理解せずに選んでしまうと、設置後に後悔するリスクがあります。
今回は、主要メーカー8社の特徴をはじめ、導入までの流れや押さえておくべき基礎知識まで網羅的に解説します。非常用発電機の選定でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
非常用発電機に関する基礎知識
非常用発電機の導入を検討する際は、まず基本的な知識を押さえることが欠かせません。ここでは、非常用発電機の役割や種類、関連法令、設置目的といった重要なポイントを整理して解説します。
非常用発電機とは
非常用発電機は、災害や事故によって停電が発生した際に電力を供給し、建物内の安全を確保するための設備です。導入することで避難環境を整備できるほか、人命を守るための重要なインフラとして機能します。
停電時には、エレベーター内での閉じ込めや、防火設備の停止による被害拡大などのリスクが生じます。特に病院や介護施設では、医療機器の停止が命に関わるケースもあるため、非常用発電機の設置は安全対策として非常に有効です。
非常用発電機の種類
非常用発電機は使用する燃料によってタイプが分かれます。
- ディーゼルタイプ:ディーゼルを燃料とする
- ガスタービンタイプ:LPガスを主な燃料とする
- ハイブリッドタイプ:2つ以上の燃料を組み合わせたもの(代表的なもはディーゼルと蓄電池/LPガスと蓄電池を組み合わせたもの)
燃料が異なれば保管方法や調達方法も変わるので、それぞれの特徴を理解したうえで選択しなければなりません。まずは、信頼できる業者を探して状況と希望を伝えて具体的なプランを提案してもらいましょう。
非常用発電機に関する2つの義務
非常用発電機の設置には、「設置義務」と「点検義務」という2つの法的義務があります。これらを怠ると、安全性や法令順守に重大な問題が発生する可能性があるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
設置義務
消防法により、延べ床面積1,000㎡以上の「特定防火対象物」には、非常用発電機の設置が義務付けられています。該当する施設の例として、病院、社会福祉施設、ホテル、百貨店などが挙げられます。
また、建築基準法では、高さ31mを超える建築物や、不特定多数が利用する「特殊建築物」にも設置義務が課されています。学校や工場、倉庫なども対象に含まれます。
点検義務
非常用発電機を設置した後は、「消防法」「建築基準法」「電気事業法」に基づき、定期的な点検が必要です。法令ごとに点検内容や頻度が異なるため、どのような点検が求められるかを理解し、適切に実施する必要があります(詳細な点検内容は、各法令や自治体の情報をご確認ください)。
非常用発電機の設置目的
非常用発電機の導入目的は、大きく次の3つに分類されます。設置目的によって、供給先となる設備や必要な電力量が異なるため、最適な容量を選定するうえでも目的の明確化が不可欠です。
- 保安目的:冷凍設備やエレベーター、救命装置など、建物の基本機能維持に必要な設備へ電力を供給するケース。
- 防災目的:誘導灯や非常照明、消火設備など、避難誘導・防災活動を支える設備への供給を目的とするケース。
- 共用目的:保安と防災の両方をカバーする形で、幅広い設備に電力を供給するケース。
非常用発電機を導入する際の流れ
非常用発電機を導入するまでの一般的な流れは次のとおりです。
- 業者へ相談する
- ヒアリングを通して要望や予算に基づきプランを作成してもらう
- 提案されたプランを検討する
- 契約を締結し、設置工事のスケジュールを調整する
- 設置工事を行うする
非常用発電機を導入する際は、まず信頼できる業者への相談から始まります。設置にあたっては、予算や設置場所、必要容量など検討すべき要素が多く、スムーズな進行には専門的なサポートが欠かせません。
一般的な流れとしては、最初に業者へ相談し、要望や予算に基づいたプランを作成してもらいます。その後、提示されたプラン内容を検討し、納得のうえで契約を締結します。契約後は工事日程を調整し、設置工事が実施されるという手順です。
このプロセスの中でも特に重要なのが、相談先となる業者選びです。非常用発電機の取り扱い実績が豊富な業者であれば、これまでの経験を活かして、建物の構造や用途に応じた最適なメーカー・機種の提案が期待できます。また、導入後の保守や点検体制に関しても、柔軟かつ信頼性の高い対応を受けやすくなります。
とはいえ、すべてを業者任せにするのはリスクを伴います。非常用発電機は一度設置すると簡単に変更できない設備のため、発注者側にもある程度の基礎知識が求められます。導入後に後悔しないためにも、事前に最低限の情報を理解し、業者と協力しながら進めていくことが大切です。
非常用発電機を製造している主なメーカー
非常用発電機は多くのメーカーが製造しており、それぞれに異なる特徴があります。しかし、一般の方がその違いを判断するのは簡単ではありません。導入後に後悔しないためには、メーカーごとの特性を理解したうえで選定することが重要です。ここでは、代表的な8社の非常用発電機メーカーを取り上げ、それぞれの概要と特徴を解説します。
- ヤンマーホールディングス株式会社
- ニシハツ株式会社
- 株式会社東京電機
- デンヨー株式会社
- 株式会社クボタ
- 株式会社日立製作所
- 川崎重工業株式会社
- ダイハツディーゼル株式会社
ヤンマーホールディングス株式会社

ヤンマーホールディングス株式会社は、大阪府大阪市北区に本社を構える農業機械の大手企業で、2013年4月1日に設立されました。
同社が製造する非常用発電機は、ラジエーター冷却方式と放水循環冷却方式の2タイプに対応し、容量別にシリーズ展開されています。さらに、防災設備用発電機や場用発電機、太陽光発電システムなども取り扱っており、幅広い電源設備の提案が可能なことが特徴です。
ニシハツ株式会社

ニシハツ株式会社は、佐賀県唐津市に本社を置く、1963年10月11日創業の企業です。非常用発電機装置や自動制御盤の製造・販売、メンテナンスなどを手がけています。
同社の非常用発電機は消防法に準拠しており、専用の発電機室が不要であることが大きな特長です。また、自家発電装置としての信頼性が高く、停電対策に優れた評価を得ています。設置場所の柔軟性を求める方や、停電対策を重視する方に適したメーカーです。
株式会社東京電機

株式会社東京電機は、茨城県つくば市に本社を構え、1920年3月に創業された老舗メーカーです。非常用・防災用発電装置の製造に加えて、自家発電装置の設計・製造・販売・据付・メンテナンスまで一貫対応しています。
中でも、大型燃料タンクを搭載した非常用発電機は72時間連続運転が可能で、自動保守運転機能も標準搭載されています。遠隔操作・遠隔診断機能や、防音設計に配慮されたモデルもあり、安全性と快適性を重視する施設に適しています。
デンヨー株式会社

デンヨー株式会社は、京都府京都市に本社を持ち、1948年7月2日に創業した企業です。発電機に加え、コンプレッサーなどの製造も行っています。
発電機分野では、工業用・車載用・家庭用と幅広く対応しており、国内市場におけるシェアは60%以上とトップクラスを誇ります。高い信頼性と供給実績を重視する場合におすすめのメーカーです。
株式会社クボタ

株式会社クボタは、大阪府大阪市浪速区に本社を構える、1890年創業の老舗企業です。産業用ディーゼルエンジンや建築資材、鉄管などの製造を手がけており、特にディーゼルエンジンの耐久性は世界的に高く評価されています。
同社の非常用発電機にはインバータ発電方式が採用されており、パソコンや電子制御機器の電源としても安心して使用できます。耐久性と安定した電力供給を求める方におすすめのメーカーです。
株式会社日立製作所

株式会社日立製作所は、東京都千代田区に本社を構える総合電機メーカーで、1920年2月に創業しました。
同社の非常用発電機「日立サンパワーシリーズ」は、電気系統の信頼性が高く、自動始動装置を搭載。停電発生時には10秒または40秒以内に自動で送電が開始されます。手動操作を最小限に抑えたい方や、信頼性を重視したい施設に最適なメーカーです。
川崎重工業株式会社

川崎重工業株式会社は、東京都港区および神戸市中央区に本社を置く、1896年創業の総合重工業メーカーです。
全国で7,000台以上の非常用発電機の導入実績があり、150kVA〜6,000kVAまでの豊富なラインナップを展開。さらに、産業用ガスタービンのパイオニアとしても業界で知られています。導入実績や大容量機種を求める方に適したメーカーといえるでしょう。
ダイハツディーゼル株式会社

ダイハツディーゼル株式会社は、大阪府大阪市北区に本社を構え、1907年に創業されたディーゼルエンジン専門メーカーです。母体が大手自動車メーカーであることから、エンジンの信頼性には定評があります。
非常用発電機は情報通信、医療、一般産業など幅広い分野で活用されており、地下室から屋上まで柔軟に設置できる機種が揃っています。なお、社名に「ディーゼル」とありますが、ガスタービンタイプの発電機も製造しています。信頼性と設置自由度を両立したい方におすすめのメーカーです。
非常用発電機を導入するときの注意点
非常用発電機を導入する際に最も重要なことは、必要な容量を正しく見極めることです。そのためには、非常時に稼働させる予定の機器や設備を事前に洗い出し、必要な電力量を正確に把握する必要があります。
ただし、電力の算出には注意が必要です。消費電力だけでなく、機器の起動時にかかる「起動電力」も考慮しなければなりません。この計算には専門的な知識が求められるため、信頼できる業者に相談することが不可欠です。
その際に重要なのが、相談する業者の選定です。業者によって経験や対応力には大きな差があり、特に実績豊富な業者であれば、幅広い現場に対応してきたノウハウを活かし、状況に応じた柔軟な提案が可能です。
また、豊富な経験を持つ業者は複数のメーカーに精通している場合が多く、設置場所や用途に応じて最適な機種を提案してくれる可能性も高まります。非常用発電機の導入を検討し始めた段階で、まずは実績と信頼のある業者に相談することが、失敗しない第一歩です。
まとめ
非常用発電機は、災害時の安全確保や事業継続のために欠かせない設備であり、その選定においては信頼できるメーカーと最適な機種の選択が重要です。各メーカーにはそれぞれ特長や強みがあるため、用途や設置条件に応じて適切な製品を見極める必要があります。
しかし、発電機の性能や法令要件、電力容量などを踏まえて最適な機種を選定するには、専門的な知識と実務経験が求められます。自己判断だけで進めてしまうと、導入後に不具合やコスト面での後悔につながるおそれがあります。
そのため、導入を検討する際には、実績ある専門業者に相談することが最も確実な選択といえるでしょう。とりわけ、数多くの現場を経験してきた業者であれば、建物の条件や利用目的、予算に応じて、柔軟かつ的確な提案が可能です。さらに、多様なメーカーの製品に精通していることで、選択肢の幅も広がり、より納得感のある導入につながります。
小川電機株式会社は、創業60年以上の歴史と数多くの設置実績を持つ非常用発電機の専門業者です。豊富な経験をもとに、お客様の課題やニーズに合わせた最適なメーカー・機種のご提案が可能です。非常用発電機の導入や選定にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。