非常用発電機は、災害時や停電時に重要な役割を果たしますが、その騒音が大きな問題になることをご存じでしょうか?非常用発電機の設置には「建築基準法」「消防法」「電気事業法」などの法令や条例が関わっており、適切な設置と管理が求められます。しかし、騒音に関しても規制や対策が必要なのか疑問に思う方も多いでしょう。
今回は、非常用発電機の騒音に関する基礎知識や、実際にできる対策をわかりやすく解説します。設置後の騒音トラブルが不安な方や、適切な対策を知りたい方にとって、有益な情報をお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
非常用発電機が出す騒音の種類
非常用発電機は、稼働時に必ず音を発生させます。しかし、一口に「騒音」といっても、その発生源や特性はさまざまです。適切な騒音対策を講じるには、まず騒音の種類を理解することが重要です。ここでは、非常用発電機が発する主要な騒音の種類について詳しく解説します。
- 稼働音
- 吸排気音
- 振動音
- 低周波音
稼働音
非常用発電機の騒音の中で最も大きなものが稼働音です。これは、エンジンのピストン運動による衝撃音や、機械の動作によって発生する機械音が主な原因となります。
非常用発電機は主に非常時に稼働するため、日常的にその騒音を意識する機会は少ないかもしれません。しかし、実際に稼働した際の音量を事前に把握しておかないと、予想外の騒音トラブルにつながる可能性があります。非常時の環境を快適に保つためにも、どれほどの音が発生するのかを理解しておくことが大切です。
実際の騒音レベルを確認する方法として、負荷試験への立ち会いがあります。負荷試験では、発電機を稼働させて点検を行うため、実際の稼働音を体感できます。事前に騒音レベルを把握し、必要な対策を講じることが、安心・安全な運用につながります。
吸排気音
非常用発電機の稼働時には、燃焼による排気や、エンジンを冷却するための吸気が行われます。この際に発生する吸排気音も、無視できない騒音の一つです。
吸排気音の大きさは稼働音ほどではないものの、設置環境によっては十分に騒音問題となり得ます。特に、住宅地やオフィスビルの近くでは、吸排気音が周囲の環境に影響を与える可能性があります。
この対策として、消音器(マフラー)を設置する方法があります。ただし、消音器の導入には一定のコストがかかるため、導入前に負荷試験で吸排気音を実際に確認し、必要性を判断することが重要です。
振動音
発電機の稼働時には、エンジンの動作による振動が発生します。この振動が建物に伝わることで、振動音として周囲に影響を及ぼすことがあります。
振動音は建物全体を通じて広範囲に伝わるため、発電機から離れた場所でも意外なほど騒音が感じられることがあります。特に、発電機を設置する建物の構造によっては、振動が拡散しやすく、予想以上の騒音問題につながることがあります。
そのため、負荷試験の際には、建物内のさまざまな場所で振動音の影響を確認し、必要に応じて防振対策を検討することが重要です。
低周波音
騒音は通常、人が耳で認識できる音を指します。しかし、低周波音(1Hz~100Hzの周波数帯)は聴覚では捉えにくいものの、人に影響を及ぼすことがあります。
特に、超低周波音(20Hz以下)は、耳で感じることが難しいものの、長時間浴び続けると不安感や圧迫感などの心身症状を引き起こす可能性があります。そのため、単に可聴音だけでなく、低周波音の対策も考慮する必要があります。
非常時には、発電機の稼働が長時間にわたることも想定されます。そのため、快適な環境を維持するためには、低周波音の影響も理解した上で、適切な防音・防振対策を行うことが重要です。
非常用発電機の騒音レベル
先ほどは、非常用発電機が発する騒音の種類について解説しました。しかし、具体的にどれくらいの音量なのかを知ることも重要です。ここでは、一般的な騒音レベルと比較しながら、非常用発電機の騒音レベルについて説明します。
目安となる騒音レベル
私たちは日常生活の中で、さまざまな音を耳にしています。それらの音の騒音レベルをデシベル(dB)で表すと、次のようになります。
30dB | 郊外の深夜、ささやき声 |
40dB | 市内の図書館、静かな住宅地の昼 |
50dB | 静かな事務所 |
60dB | 静かな乗用車、普通の会話 |
70dB | 電話の着信音、騒々しい街頭、騒々しい事務所 |
80dB | 地下鉄の車内、電車の中 |
90dB | 大きな歌声、工事現場 |
100dB | 電車が通過するときのガード下 |
一般的に、70dBを超えると多くの人が「騒音」と感じるレベルになります。そのため、非常用発電機の騒音対策においては、70dBを基準に考えることが重要です。
なお、環境省が定める住宅地における騒音の環境基準は次のとおりです。
- 昼間の騒音基準:55dB以下
- 夜間の騒音基準:45dB以下
非常用発電機の騒音レベルと規制
非常用発電機の騒音レベルは75dB~100dB程度です。これは、電車が通過するガード下や工事現場に匹敵するレベルであり、住宅地やオフィスビルに設置する場合、騒音トラブルが発生するリスクが高いことを意味します。
では、これほどの騒音が発生するにもかかわらず、規制はあるのでしょうか?
基本的に、これは、非常用発電機が常時稼働する設備ではなく、あくまで非常時に使用されることを前提非常用発電機は騒音規制や振動規制の対象にはなりません。としているためです。
ただし、自治体によっては、事前に手続きが必要な場合があるため、設置前に必ず行政に確認を行うことが重要です。
また、法的な規制がない場合でも、近隣住民やオフィスの従業員に配慮することは必要不可欠です。特に、住宅が近接している場合は、事前に騒音対策を講じることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
非常用発電機の騒音対策の必要性
非常用発電機の騒音対策は、快適な非常時環境の確保と企業の信頼維持のために不可欠です。
通常、非常用発電機は非常時にのみ稼働するため、平時には騒音が問題視されにくい傾向があります。しかし、いざ稼働した際に騒音が予想以上に大きかった場合、後から対策を講じることは困難です。そのため、事前に騒音レベルを把握し、適切な対策を講じておくことが重要です。
特に、地震や停電などの災害発生時には、建物内で長時間過ごすことを余儀なくされる可能性があります。電力復旧までの期間は予測が難しく、場合によっては1週間以上に及ぶことも考えられます。このような状況下で、発電機の騒音が大きすぎるとストレスが蓄積し、心身に悪影響を及ぼす可能性があるため、環境を整えておくことが不可欠です。
また、騒音は周辺環境にも影響を与えるため、企業の信用問題にも関わる点に注意が必要です。特に、発電機の設置場所が住宅地やオフィス街に近い場合、非常時の騒音が近隣住民や他の企業の迷惑となり、苦情やトラブルに発展する可能性があります。「非常時だから仕方ない」では済まされず、周囲への配慮を怠ると企業の信頼を損なう原因にもなり得ます。
では、具体的にどのように騒音対策を講じればよいのでしょうか?
まずは、発電機の負荷試験に立ち会い、実際の騒音レベルを確認することが重要です。負荷試験は、発電機を実際に稼働させ、正常な動作を確認する点検の一環として行われます。この試験に立ち会うことで、どの程度の音が発生するのか、設置場所による影響はどうかを把握できるため、適切な対策を立てることが可能になります。
また、定期点検時に騒音による苦情が寄せられた場合は、次回の点検までに必ず対策を講じることが企業としての責任です。一度発生した騒音トラブルを放置すると、次回の点検時にはより深刻な問題へと発展しかねません。そのため、事前の対策を徹底し、非常時に安心できる環境を確保することが重要です。
非常用発電機における騒音対策
非常用発電機の騒音対策は、快適な環境の確保と近隣への配慮のために欠かせません。騒音対策を講じることで、非常時のストレス軽減や企業の信用維持にもつながります。次の3つの方法を実施することで、発電機の騒音を効果的に抑えることが可能です。
- 実績豊富な業者に相談する
- 騒音対策パネルを設置する
- 静音タイプの機種を選択する
適切な対策を講じ、非常時でも快適な環境を維持できるよう、事前に準備を進めておきましょう。
実績豊富な業者に相談する
非常用発電機の騒音対策で最も重要なのは、経験豊富な業者に相談することです。実績のある業者は、多様な現場での設置経験を持っており、それぞれの環境に応じた最適な対策を提案できます。たとえば、防音材の種類や設置方法、発電機の配置の工夫など、具体的な対策を講じることが可能です。
また、非常用発電機の機種ごとに騒音レベルが異なる点にも注意が必要です。業者に相談することで、設置環境や使用条件に応じた最適な機種を選定でき、無駄なコストをかけずに効果的な騒音対策を実施できます。
騒音トラブルを未然に防ぐためにも、専門知識を持つ業者のアドバイスを受けることが、最も確実な騒音対策の第一歩です。
騒音対策パネルを設置する
発電機の周囲を騒音対策パネルで囲むことで、騒音を効果的に低減できます。一見単純な対策に思えるかもしれませんが、パネルの有無で騒音の伝わり方は大きく変わります。そのため、騒音が気になる場合は、早めに設置を検討することをおすすめします。
ただし、使用するパネルの種類によって効果に差が出るため、慎重に選定する必要があります。騒音対策パネルには、次のようなタイプがあります。
- 遮音性能タイプ:騒音を外部に漏れにくくする
- 吸音性能タイプ:音の反響を抑えて全体の騒音を軽減する
より高い効果を得たい場合は、遮音性能と吸音性能を兼ね備えたパネルを選ぶことが理想的です。ただし、性能が高くなるほどコストも増えるため、効果と予算のバランスを考慮しながら選定することが重要です。
最適なパネルを選ぶためにも、専門業者に相談し、設置環境に適した対策を講じましょう。
静音タイプの機種を選択する
発電機の騒音を根本的に抑えたい場合は、静音タイプの機種を選択することも有効な対策の一つです。
静音タイプの発電機は防音設計が施されており、通常の発電機と比べて稼働時の騒音が大幅に軽減されます。ただし、一般的な発電機よりも価格が高くなる傾向があるため、導入時にはコストとのバランスを考えることが重要です。
また、設置場所の選定も騒音対策に大きく影響を与えます。たとえば、発電機を建物の奥まった場所に設置する、吸排気の向きを工夫するなど、設置方法を見直すだけでも騒音の影響を軽減できる可能性があります。
そのため、費用が気になる場合は、まず設置場所の工夫を行った上で、それでも騒音が問題となる場合に静音タイプの機種を検討するのが合理的です。設置環境に応じた最適な選択をするためにも、業者と相談しながら決定するとよいでしょう。
まとめ
非常用発電機の騒音は、設置環境や稼働状況によって大きく異なりますが、一般的に75dBから100dBと非常に高い音量を発生させます。このレベルの騒音は、工事現場や電車のガード下に匹敵するため、非常時に長時間その環境で過ごすことは大きなストレスとなります。
さらに、建物の構造によっては騒音や振動が広範囲に伝わり、住民や近隣のオフィスに影響を及ぼす可能性もあります。そのため、たとえ行政の規制対象外であっても、事前に適切な騒音対策を講じることが必要不可欠です。
騒音対策を怠ると、非常時に快適な環境を確保できないだけでなく、企業の信用問題にも関わるリスクがあります。騒音によるクレームや近隣トラブルを防ぐためにも、設置前の計画段階から専門業者に相談し、適切な機種選定や設置場所の調整、防音対策を徹底することが重要です。
特に、負荷試験への立ち会いを通じて実際の騒音レベルを把握し、必要に応じて防音パネルの設置や静音タイプの機種の導入を検討するとよいでしょう。
小川電機株式会社は、創業60年以上の実績を持つ専門業者として、さまざまな非常用発電機の設置を手がけてきました。豊富な経験をもとに、最適な機種選定・設置場所の提案・騒音対策のアドバイスを行い、お客様の環境に合わせたプランを提供いたします。
非常用発電機の騒音対策でお悩みの方、安心して使用できる環境を整えたい方は、ぜひ小川電機までお気軽にご相談ください。