非常用発電機の導入は、災害時の電力確保に不可欠ですが、その費用の高さが課題となることも少なくありません。しかし、補助金を活用すれば、コストを抑えて導入することが可能です。
非常用発電機の導入を支援する補助金制度は、複数存在します。適切な補助金を活用することで、初期費用の負担を軽減しながら、必要な設備を整えることができます。
今回は、非常用発電機の導入に役立つ3つの補助金について詳しく解説します。非常用発電機の設置を検討している方や、補助金を利用してコストを抑えたい方にとって、実用的な情報をお伝えします。
非常用発電機に関する基礎知識
非常用発電機を導入する際には、まずその役割や法的義務について正しく理解することが重要です。なぜなら、設置の必要性や適用される補助金の種類は、非常用発電機の機能や法規制によって異なるからです。ここでは、非常用発電機の基本的な役割と、設置に関わる法的義務について解説します。
非常用発電機の役割
非常用発電機の最大の役割は、停電時に電力を供給し、生命や財産を守ることです。
停電が発生すると、エレベーターの停止による閉じ込め事故や、防火設備の機能不全による火災拡大などのリスクが高まります。非常用発電機が稼働すれば、エレベーターの復旧により迅速な避難が可能となり、消防設備も正常に機能し続けます。
つまり、非常用発電機は「人命を守る」と同時に「災害被害の拡大を防ぐ」ために欠かせない設備なのです。
非常用発電機の法的義務
非常用発電機の設置は、建物の種類や用途によって法律で義務付けられているケースがあります。ここでは、「設置義務」と「点検義務」の2つに分けて解説します。
設置義務
次の建築物では、消防法や建築基準法により非常用発電機の設置が義務付けられています。
建物の種類 | 概要 |
---|---|
延べ床面積1,000㎡以上の特定防火対象物(消防法) | 大型商業施設、病院、社会福祉施設、老人福祉施設など、多くの人が利用する建物が該当します。 |
高さ31m以上の建築物や特殊建築物(建築基準法) | 特殊建築物とは、火災発生時に危険性が高く、周囲への影響が大きいとされる建築物です。これらの建物には、一般の建築物よりも厳しい設置基準が適用されます。 |
点検義務
非常用発電機を設置した後は、定期的な点検が法律で義務付けられています。
対象法令 | 点検内容 | 点検頻度 |
---|---|---|
消防法 | 機器点検 | 6ヶ月に1度 |
総合点検 | 1年に1度 | |
建築基準法 | 法定点検 | 概ね6ヶ月~1年に1度 |
電気事業法 | 月次点検 | 1ヶ月に1度 |
年次点検 | 1年に1度 |
法令を遵守することは、企業や施設管理者の責務です。適切な点検を怠ると、万が一の際に設備が機能せず、大きな被害を招く可能性があるため、定期的なメンテナンスを徹底しましょう。
非常用発電機の必要性
「設置義務がないから不要」と考えるのは危険です。非常用発電機は、法律で義務付けられていない場合でも、災害時の人命保護や事業継続の観点から、積極的に導入すべき設備です。
特に、南海トラフ地震などの大規模災害が懸念される昨今、多くの企業が自主的に非常用発電機を導入しています。その背景には、主に次のような理由があります。
社員の安全確保
企業にとって、従業員の命を守ることは最優先事項です。非常用発電機があれば、停電時でも最低限の安全設備が稼働し続けます。
事業継続(BCP)対策
停電が長引くと、企業活動は停止し、取引先や顧客にも影響を及ぼします。非常用発電機を導入することで、電力供給を維持し、事業の継続や早期復旧が可能となります。
雇用の維持
事業の早期復旧ができれば、従業員の雇用を守ることにもつながります。
災害や事故が発生した後では、できることは限られています。だからこそ、「非常時に備え、今のうちに準備する」ことが、企業の責任であり、事業を守る重要な対策なのです。
非常用発電機の導入時に使用できる3つの補助金
非常用発電機の設置は、防災対策として社会的に重要な役割を果たします。そのため、国や自治体では導入を支援するための補助金制度を設けています。特に、次の3つの補助金は、活用できる可能性が高いため、導入を検討している方はぜひ確認しておきましょう。
- 災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金
- BCP実践促進助成金
- 石油ガス災害バルク等の導入事業費補助金
災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金
災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金は、災害時のエネルギー供給を確保することを目的として、経済産業省が運用しています。特に、避難者や避難困難者が集まる施設のインフラ整備を支援する制度です。
概要
- 災害対策の一環として、石油製品タンクやLPガスタンク、非常用発電機の設置を支援。
- 民間団体から申請を受け付け、対象者を選定し、補助金を交付。
対象施設
- 医療施設・福祉施設
- 避難所や避難先になり得る施設
- 避難困難者がいる施設
申請要件
申請するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 日本国内に拠点を有していること
- 本事業を推進する組織体制と必要な人員を確保していること
- 事業を円滑に進められる資金力と管理能力を有していること
- 経済産業省から補助金交付の停止措置を受けていないこと
- 経済産業省の公式サイトでの採択結果公表に同意していること
BCP実践促進助成金
BCP(事業継続計画)とは、企業が災害や事故などの緊急事態に備えて策定する計画です。BCP実践促進助成金は、BCPの策定や災害対策用品の導入を支援することを目的として、公益財団法人東京都中小企業振興公社が運用しています。
概要
- 企業がBCPを策定し、それを実践するために必要な設備や物品の導入を支援。
- 東京都の制度だが、他の自治体にも同様の補助金が存在するため、各自治体へ確認が必要。
補助対象
- 非常用発電機を含む防災設備や対策用品
- 事業継続力を強化するためのシステム(例:基幹システムのクラウド化)
対象企業
- BCPを策定し、事業継続のための設備導入を行う中小企業
- ※特定非営利活動法人・財団法人・医療法人は対象外
申請要件
以下のいずれかを満たすことが必要です。
- 2017年度以降に東京都中小企業振興公社の「BCP策定支援事業」を受講し、それに基づいたBCPを策定していること。
- 中小企業強靭化法の「事業継続力強化計画」として認定され、計画に沿ったBCPを策定していること。
- 2016年度以前に東京都または公社が実施したBCP策定支援事業を活用し、BCPを策定していること。
石油ガス災害バルク等の導入事業費補助金
この補助金は、災害発生時のライフライン維持を目的とし、一般社団法人エルピーガス振興センターが運用しています。
概要
- 医療施設や福祉施設、避難所などにおいて、災害時のエネルギー供給を確保するための設備導入を支援。
- 石油ガス災害バルク(LPガスなど)や非常用発電機の設置に対して補助が行われる。
対象施設
- 医療施設・福祉施設
- 避難困難者が多数存在する施設
- 自治体が避難所に指定した公共施設
申請要件
申請するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 補助金の対象施設を所有または管理し、購入またはリースした石油ガス災害バルクを設置・管理していること。
- 施設所有者または管理者が、購入した設備をリースし、適切に設置・管理していること。
非常用発電機の設置前に確認すべきポイント
非常用発電機を導入する際には、事前にいくつかの重要なポイントを確認することが不可欠です。適切な機種や容量を選ばなければ、必要な電力を確保できず、想定通りの運用ができなくなる可能性があります。ここでは、導入前に確認すべき3つのポイントについて解説します。
- 設置目的を明確にする
- 設置場所を確認する
設置目的を明確にする
非常用発電機の導入にあたっては、「どの用途に電力を供給するのか」を明確にすることが重要です。設置目的によって、必要な発電機の容量や種類が異なります。主な設置目的は次の3つです。
- 保安(エレベーター、冷凍設備、救命設備など)
- 防災(誘導灯、非常用照明、消火設備など)
- 保安・防災共用(両方の用途に対応)
保安目的
エレベーターや救命設備など、安全確保に必要な設備に電力を供給するための発電機です。大容量が求められるため、出力の大きい機種を選ぶ必要があります。
防災目的
誘導灯や消火設備など、火災や避難時に必要な機器への電力供給を目的とする発電機です。保安目的のものと比べると、比較的少ない電力で運用できるのが特徴です。
保安/防災共用
保安と防災の両方を目的とする場合は、最も大きな容量が必要になります。しかし、多様な用途に対応できるため、安全性の向上という点では最適な選択肢となります。
設置場所を確認する
発電機の設置場所は、機種のサイズや必要な容量と密接に関係しています。事前に設置スペースを確保し、適切な機種を選定することが重要です。
また、設置時には、次の点も考慮する必要があります。
防音・振動対策 | ディーゼルタイプの発電機は騒音や振動が発生するため、適切な設置場所を選ぶ必要があります。 |
排気処理 | 燃料の種類によっては、排気設備の設置が必要になる場合があります。 |
アクセスの確保 | メンテナンス時に点検・修理がしやすいよう、十分なスペースを確保することが望ましいです。 |
燃料の選択肢
非常用発電機は燃料の種類によって特性が異なるため、用途に応じて適切なタイプを選ぶことが大切です。主な燃料の種類とその特徴を解説します。
ディーゼル(軽油)
最も一般的なタイプで、種類や容量の選択肢が豊富です。安定した電力供給が可能ですが、以下の点に注意が必要です。
メリット | 燃料が入手しやすく、即時起動が可能。 |
デメリット | 騒音や振動が大きいため、設置場所に配慮が必要。古い機種は排気ガス(黒煙)が発生することもある。 |
LPガス(ガスタービン)
ディーゼルと比べると歴史が浅く、選択肢は限られますが、騒音や振動が少ないため設置の自由度が高いです。
メリット | 災害時でも燃料供給を受けやすい。比較的クリーンな排気。 |
デメリット | 給排気設備の追加工事が必要な場合があり、初期コストが高くなる可能性がある。 |
ハイブリッド(複数燃料)
ディーゼルと蓄電池、LPガスと蓄電池など、2つ以上の燃料を組み合わせることで、長時間の稼働が可能なタイプです。
メリット | 異なる燃料を組み合わせることで、災害時のリスクを低減できる。 |
デメリット | 蓄電池は定期的な交換が必要となるため、メンテナンスコストが発生する。 |
非常用発電機の導入で後悔しないためのポイント
非常用発電機を導入する際には、事前に慎重に検討しなければ、「選定ミス」や「予想以上のコスト負担」などの後悔につながる可能性があります。特に、次の2つのポイントを押さえておくことが重要です。
- 信頼できる業者の選定
- ランニングコストの把握
ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
信頼できる業者の選定
非常用発電機の導入を成功させるためには、適切な業者選びが欠かせません。費用の安さだけで判断すると、発電機の機種選定や電力計算が不十分となり、結果として期待した性能が発揮できない可能性があります。
業者選定のポイントは主に次の3点です。
- 実績が豊富な業者を選ぶ
- 補助金に詳しい業者を選ぶ
- アフターサポートの充実度を確認する
業者選びで迷った場合は、これらの基準をもとに検討することで、信頼できる業者を選定しやすくなります。
実績が豊富な業者を選ぶ
実績のある業者は、非常用発電機の導入経験が豊富で、補助金を活用した導入のノウハウも持っている可能性が高くなります。また、現場の状況や予算に応じた最適な提案を受けられる点も大きなメリットです。
補助金に詳しい業者を選ぶ
補助金の活用はコスト削減の大きなポイントです。補助金申請のサポート実績がある業者であれば、スムーズに制度を利用できる可能性が高まります。
アフターサポートの充実度を確認する
導入後の点検やメンテナンスの対応も業者選びの重要なポイントです。購入後のフォローがしっかりしているかどうかを事前に確認しましょう。
ランニングコストの把握
非常用発電機は、設置後の維持管理費用も考慮しなければなりません。導入時のコストだけでなく、長期的なランニングコストも事前に把握しておくことが重要です。
主なランニングコストには次のものが挙げられます。
- 点検費用(法令に基づく定期点検が必要)
- 部品交換費用(消耗品の定期的な交換が必要)
- 修理費用(突発的な故障に備えた費用)
特に、修理費用は不定期に発生するため、予算の積み立てが重要です。
また、業者によっては、導入・点検・部品交換・修理を一括で依頼することで、コストを抑えられる場合があります。導入後の費用を抑えつつ、万全の体制を整えるためにも、メンテナンスプランが充実した業者を選ぶことをおすすめします。
まとめ
非常用発電機の導入時に活用できる3つの補助金について解説しました。
非常用発電機は、災害時の電力供給を確保し、生命や財産を守るために不可欠な設備です。しかし、導入には高額な費用がかかるため、適切な補助金を活用することで、コスト負担を軽減できます。
補助金は誰でも利用できるわけではありませんが、要件を満たせば大きな助けとなります。特に、申請の手続きや設備の選定においては、経験豊富な業者のサポートを受けることが重要です。信頼できる業者に依頼することで、補助金制度を最大限に活用し、最適な設備導入が可能になります。
小川電機株式会社は、創業60年以上の歴史を持ち、非常用発電機の導入に関する豊富な実績を誇ります。補助金を活用した導入支援も行っており、状況に応じた最適な提案が可能です。非常用発電機の導入を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。