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非常用発電機にはバッテリーが内蔵されています。このバッテリーには、どのような役割があるのでしょうか。

今回は、非常用発電機のバッテリーの役割や種類、点検方法について解説します。本記事を読めば、非常用発電機のバッテリーについての理解が深まります。

非常用発電機とは

まず、非常用発電機について解説します。非常用発電機とは、災害などで停電が発生しても、電気を使えるようにするための設備です。ガスやガソリンによって、エンジンを稼働させることによって発電できます。

非常用発電機は法律でも規定されており、たとえば次のように定められています。

消防法による定義

  • 定格負荷で60分以上連続運転できること
  • 燃料油は2時間以上の容量であること
  • 40秒以内に電圧確立できること

建築基準法による定義

  • 防災設備に30分以上の電力供給ができること
  • 30分以上の連続運転ができる容量を持つこと
  • 40秒以内に電圧確立ができること

このように、非常用発電機は、消防法や建築基準法で定義されており、それぞれの記述はやや異なります。また、非常用発電機に関する詳細は、経済産業省が提供するガイドラインをご確認ください。公式情報を基に導入検討を進めることで、安全性や法令遵守を確保できます。

非常用発電機のバッテリーの概要

バッテリーは、非常用発電機を始動するのに使用されます。非常用発電機のバッテリーには、一般的に鉛蓄電池が使われています。

非常用発電機のバッテリー

鉛蓄電池とは

鉛蓄電池とは、鉛を使用した二次電池です。二次電池とは、充電可能な電池のことです。鉛蓄電池は、たとえば自動車やキュービクルのバッテリーなどに使用されています。

鉛蓄電池には次のような特徴があります。

  • 50Ah程度の小型のものから、3000Ahまでさまざまな種類がある
  • 他のバッテリーと比べて安価
  • 温度の変化に比較的強い

鉛蓄電池の種類

鉛蓄電池には、主に次の2種類があります。

  • ベント型
  • シール型(制御弁式)

ここでは、この2種類の違いについて解説します。

ベント型

ベント型は、内部に触媒を備え、発生したガスを還元して水に戻す仕組みを持つ、最も歴史のある鉛蓄電池の形式です。

充電中に酸素と水素のガスが発生するため、これらを還元して水に戻す必要があります。この還元作業は、触媒栓と呼ばれる部品が担います。触媒栓は内部で酸素と水素を化学反応させ、水蒸気に変換し、水として電池内部に戻します。

しかし、触媒の還元効率には限界があるため、水分の完全な蒸発防止は困難です。そのため、定期的に電解液を補充し、触媒栓自体も交換する必要があります。

こうしたメンテナンスの手間がかかる点が、ベント型の課題といえます。近年では、この課題を解決したシール型(制御弁式)が主流になりつつあります。

シール型(制御弁式)

シール型(制御弁式)は、電解液の補充が不要で、メンテナンスが少なくて済む設計の鉛蓄電池です。特に、セル間の電圧差を均一にする均等充電が不要であることが特徴です。

この特性により、シール型は他の蓄電池と比較してメンテナンスが容易で、より幅広く使用されています。充電中に発生するガスは主に酸素であり、この酸素は負極板で吸収される仕組みになっています。

その結果、電解液の減少が抑えられ、補充が不要となります。また、この反応を効率化するため、電解液の量は少量に抑えられています。

さらに、シール型には制御弁が装備されています。この制御弁は、過充電などにより蓄電池内部と外部の圧力に差が生じた場合に開き、内部のガスを外部に放出する役割を果たします。この仕組みによって、鉛蓄電池内部のガス圧力が過剰に上昇することを防ぎ、破裂を回避しています。これが「制御弁式」と呼ばれる由来です。

また、極板にはカルシウム合金が使用されており、自己放電を大幅に抑える設計となっています。自己放電が少ないことで、充電状態が均一に保たれ、均等充電が不要になります。

非常用発電機のメリット

非常用発電機は、停電や電力供給が困難な状況下で、安定的に電力を供給するための設備です。主に次のようなメリットがあります。災害対策の一環として重要な役割を果たすだけでなく、事業や日常生活の安心を支える設備です。

  • 停電時の電力確保
  • 柔軟な燃料対応
  • 重要施設での活用

停電時の電力確保

非常用発電機を設置することで、停電時でも重要な機器やシステムを稼働させることができます。これにより、業務の中断や生活の不便を防ぐことが可能です。

柔軟な燃料対応

ガソリン、軽油、ガスなどの多様な燃料で稼働するため、設置環境や利用条件に応じた運用が可能です。燃料が確保できれば長時間の運転も実現できます。

重要施設での活用

病院や福祉施設では、生命維持装置や冷暖房設備の稼働を確保します。データセンターでは、システムダウンによる情報損失を防ぎます。このように、停電による二次被害や混乱を最小限に抑えることができます。

非常用発電機のバッテリー交換のタイミングと方法

非常用発電機のバッテリー交換

非常用発電機のバッテリーは、安定した始動と運転を支える重要な部品です。しかし、バッテリーには寿命があり、定期的な交換が必要となります。ここでは、バッテリー交換が必要になるタイミングや交換の具体的な方法について解説します。非常時に備え、適切なメンテナンスで非常用発電機の性能を最大限に発揮させましょう。

バッテリー交換の必要性

バッテリーの寿命は5〜7年前後です。ただし、使い方によって、より寿命が短くなる場合もあります。

バッテリーの寿命が尽きてしまうと、電圧が上がらなくなり、いざというときに使えなくなってしまいます。バッテリーの寿命が過ぎたまま放置してしまうと、緊急時に非常用発電機が使用できない可能性があります。

また、寿命が切れたバッテリーをそのままにしておくと発電機に悪影響が出ます。

以上のことから、バッテリーの寿命が切れた場合は、速やかに交換をする必要があります。

バッテリー交換の手順

バッテリーの寿命が尽きている場合は、専門業者に交換を依頼するようにしてください。特に、電気工事士法に基づく資格を有する技術者による作業が必要です。資格がない状態での自己交換は、発電機の損傷や火災リスクを引き起こす可能性があるため厳禁です。

バッテリーの一般的な交換手順は次のとおりです。

  1. 古いバッテリーを取り出す
  2. 新しいバッテリーを設置する
  3. 動作・状態を確認する

手順3の動作・状態の確認では、たとえば次のような項目を確認します。

  • 充電中の電圧
  • 充電中の全セルの電圧
  • 充電中の電解液比重
  • 電解液の温度・バッテリー表面温度
  • 電解液面位
  • 外観

充電中の電圧

バッテリーの電圧の値をチェックします。電圧が規定値より低い場合は、バッテリーが充電不足の状態となっており、十分な電力を確保できない可能性があります。一方、電圧が規定よりも高い場合は、バッテリーが過充電の状態となっています。

電圧は高すぎても低すぎても、長期間継続すればバッテリーの劣化につながるため注意が必要です。

充電中の全セルの電圧

鉛蓄電池は、セルと呼ばれる一つの単電池によって構成されます。個々の単電池の電圧をチェックし、規定の範囲内であるかを確認します。それぞれのセルの電圧は、経年変化による自己放電の増加や内部抵抗の上昇などによりばらつきがあります。

規定範囲の電圧外の単電池は、さらにチェックが加わります。電圧が規定の範囲外になっている理由が判明し、その後の使用に問題がなければそのまま使用しても大丈夫です。

一方、規定範囲の電圧外となっている原因が不明であったり、使用できないと判断したりした場合は適切な対処を行います。

充電中の電解液比重

ベント型鉛蓄電池は、 全セルの電解液の比重を測定し、値が規定範囲内であるかをチェックします。比重とは水と電解液の質量の比のことです。規定の範囲外の単電池は異常があるものと判定し、 詳細に調べる必要があります。一方で、シール型鉛蓄電池は、比重測定が不要です。

電解液の温度・バッテリー表面温度

ベント型鉛蓄電池の電解液温度が、規定の範囲内であるかを測定します。一般的に、電解液温度の測定は、電解液の比重の測定と同時に行われます。

シール型鉛蓄電池は、バッテリー表面温度を測定します。温度が規定よりも高ければ、電流が大きすぎたり、電圧が高すぎたり、周囲の温度が高すぎたりする可能性があります。

電解液面位

ベント型鉛蓄電池の液面位が基準内であるかをチェックします。

液面の下がる速度が規定よりも速い場合、電流が大きすぎる、電圧の設定値が高すぎる、周囲の温度が高すぎる、バッテリー自体に問題があるなどの原因が考えられます。

ベント型鉛蓄電池では、 経年劣化が進行すると液面が下がるスピードが速くなるため、どれだけバッテリーが劣化しているかの判断材料になります。

外観

鉛蓄電池に亀裂や変形、損傷や漏液がないかをチェックします。

非常用発電機のバッテリーの寿命を伸ばすには

非常用発電機のバッテリーの寿命

非常用発電機のバッテリーの寿命は5〜7年前後ですが、不適切な扱い方をすると短くなる可能性があります。バッテリーの寿命を伸ばすには、次の3点に注意すると良いでしょう。

  • 適切な充電状態を維持する
  • 適切な温度で保管する
  • 放電をしないようにする
  • 定期的に点検を行う

適切な充電状態を維持する

バッテリーの適切な電圧は、バッテリーの機種ごとに異なります。

充電が完了しているにも関わらず充電をし続けたままにしてしまうと、バッテリーの電圧が高すぎる過充電状態となります。一方、まったく充電をしないまま放置し、バッテリーの電圧が低くなると、充電不足となります。

バッテリーは、過充電の場合でも充電不足の場合でも劣化が早くなってしまい、寿命が短くなってしまいます。そのため、定期的に充電を行い、適切な電圧を保つようにしましょう。

適切な温度で保管する

鉛蓄電池は比較的どのような温度でも状態を維持できます。しかし、高温すぎる環境の場合劣化が加速する可能性があるため注意が必要です。

バッテリーの寿命は、25℃以下で保存する場合が想定されています。しかし、バッテリーの寿命は、25℃以上になると、10℃気温が上がるごとに寿命が半減してしまいます。

このようなことから、バッテリーは25℃前後の環境に保つようにしましょう。

放電の回数を減らす

経年劣化するにつれて、バッテリーの内部抵抗は増加します。そのため、電流が大きくなればなるほど内部の電圧降下が大きくなり、バッテリーの電圧は低下し放電にかかる時間が短くなります。 その結果、 バッテリーの寿命は短くなります。

また、放電回数もバッテリーの寿命に影響します。何度も放電を繰り返すと、内部の劣化が促進され、それだけ寿命が短くなります。

ただ、バッテリーを特に問題なく使用していれば、放電は年に数回しか行わないことが一般的であるため、他の要因と比べて影響は小さいといえます。

定期的に点検を行う

非常電源に用いられる蓄電池設備に関しては、 消防法の規定に基づき、消防用設備の種類、点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法、点検の結果についての報告書の様式を定める告示により定められています。

定期的にバッテリーの点検をすることで、異常があってもすぐ対処できます。それにより、バッテリーの状態を維持できます。

まとめ

非常用発電機は、地震や洪水など不測の事態に備えるために必要です。

一般的に、非常用発電機のバッテリーには比較的安価な鉛蓄電池が使われます。鉛蓄電池は、ベント型とシール型の2種類がありますが、今日ではメンテナンスに手間がかからないシール型が普及しています。

バッテリーの寿命は5〜7年前後で、寿命がつきたバッテリーは交換する必要があります。また、バッテリーの寿命にかかわらず定期的な点検作業も必要です。

当社小川電機様では、非常用発電機のような防災設備も取り扱っています。これから、非常用発電機の導入を検討している方は、以下のフォームから設備費用の無料見積もりを申請できますので、ぜひお気軽にご利用ください。

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