発電機と蓄電池は、電気を供給する手段として広く利用されています。これらは一見同じような役割を果たしているように思われますが、その機能や特性には大きな違いがあります。
発電機は燃料を用いて電気を作り出す装置で、主に長時間にわたる電力供給が得意です。一方、蓄電池はあらかじめ蓄えておいた電気を供給する装置で、瞬時の電力供給や小規模な設備での活用が適しているとされています。
このような特徴の違いを正しく理解しておくことは、非常時や日常の電力管理において重要です。特に、非常用発電機で使用される蓄電池には寿命があり、適切なタイミングで交換しないと、突然の故障や電力供給のトラブルにつながるリスクがあります。
しかし、交換時期を見極めるのは意外に難しく、必要以上に早く交換してしまうとコストの無駄につながります。反対に、交換が遅れると重大な影響を及ぼす危険性があるため注意しなければなりません。
今回は、発電機と蓄電池の違いと非常用発電機の蓄電池の交換時期について詳しく解説します。発電機と蓄電池の基礎知識を深めたい方や、非常時の備えを見直したい方に役立つ内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
非常用発電機の種類
非常用発電機は、災害や事故など予期せぬ事態で電力が停止した際に、安定した電力を供給するために使用される重要な設備です。そのため、非常時に備えるための欠かせない手段といえます。
また、非常用発電機を設置・運用する際には、経済産業省が定める安全基準や必要な手続きに従うことが求められます。特に、発電機の安全性や設置基準に関する指針は公式サイトで公開されており、これらを事前に確認して適切に対応することが重要です。これにより、トラブルを防ぐだけでなく、安全で効率的な運用が可能になります。
参照元:
非常用発電機には、主に3つのタイプがあります。ここでは、それぞれのタイプについて詳しく解説します。
- ディーゼルエンジン式
- ガスタービン式
- ハイブリッド型
ディーゼルエンジン式非常用発電機
ディーゼルエンジンは、燃料を圧縮して自然発火させる仕組みを持つエンジンで、主に軽油や重油が燃料として使用されます。
このエンジンを搭載したディーゼルエンジン式非常用発電機は、20kVA程度の小型機種から1,000kVAを超える大型機種まで幅広く展開されており、多様な用途に対応できることが特徴です。また、他の発電機に比べて価格が比較的安価なため、多くの企業に採用されています。
ディーゼルエンジン式非常用発電機を設置する際には、消防法に基づく燃料タンクの設置と管理が必要です。具体的には、燃料タンクを安全に設置するための距離基準や耐火性、さらに火災リスクに備えた消火設備の設置が義務付けられています。定期的な点検とメンテナンスにより、これらの基準を満たすことが求められます。
しかし、燃焼時に黒煙が発生しやすく、運転中の振動や騒音が大きい点が課題とされており、このため導入に慎重になる企業もあります。
ガスタービン式非常用発電機
ガスタービン式非常用発電機は、高温高圧の空気でタービンを回転させて電力を発生させる仕組みを持ちます。この方式は、運転時の振動や騒音が少なく、機器自体がコンパクトである点が特徴です。ディーゼルエンジン式に比べて、設置場所の選択肢が広がるというメリットもあります。
一方で、ガスタービン式はディーゼルエンジン式と比較して価格が高く、給排気時の風量が大きいという課題があります。特に、給排気の風量が強い機種では、排気ダクトの設置や換気設備の強化が必要になる場合があるため、導入時に大規模な工事が必要になることも少なくありません。
そのため、導入を検討する際には機種ごとの特性を十分に理解し、適切な機種選定を行うことが重要です。迷った場合は、専門業者に相談し、プロの意見を参考にすることをおすすめします。
ハイブリッド型非常用発電機
ハイブリッド型非常用発電機は、異なる発電システムを組み合わせた発電システムの一種です。特に非常用発電機では、ディーゼルエンジン式やガスタービン式に蓄電池を組み合わせたタイプが一般的です。
この仕組みにより、燃料を使用する発電機と蓄電池の特性を組み合わせることで、通常の発電機では実現できない長時間の電力供給が可能になります。また、燃料だけで稼働する機種と比べて燃料補給の手間が少なくなる点も、大きなメリットです。電力供給の時間が長くなるだけでなく、日常の管理作業を軽減できるのも魅力といえるでしょう。
災害やトラブルの際には、少しでも長時間の電力供給が求められるため、ハイブリッド型は非常時の備えとして注目されています。
発電機と蓄電池の違い
発電機と蓄電池は、どちらも電力を供給するという共通の目的を持っていますが、それぞれに明確な違いがあります。この違いを理解することで、それぞれのメリットやデメリットを把握できるだけでなく、組み合わせることで生まれる強みも明確になります。ここでは、発電機と蓄電池の具体的な違いについて解説します。
蓄電池
蓄電池の主な役割は、電力を蓄えることです。
蓄電池は、貯蔵された化学エネルギーを電子の流れに変換して電気を供給します。この仕組みにより、燃料を必要としない点が大きな特徴であり、環境負荷の軽減や運用コスト削減にもつながります。
しかし、蓄電池は充電された電力を使うため、充電が不十分だと緊急時に利用できないリスクがあります。そのため、日常的な点検と適切な充電管理が不可欠です。点検不足が原因で非常時に稼働できない事態を避けるためにも、定期的なメンテナンスが重要です。
また、蓄電方法には、太陽光や風力といった自然エネルギーを活用する手法が広く採用されています。
発電機
蓄電池が「電気を蓄える」役割を担うのに対し、発電機の役割は「電気を生み出す」ことです。
発電機は、搭載されたエンジンを燃料で動かして発電を行う仕組みを持ちます。そのため、燃料さえあれば長時間の電力供給が可能であり、大規模な設備や非常時における電力確保に適しています。
しかし、燃料が尽きると稼働できなくなるため、災害や非常時に備えて十分な燃料を確保しておくことが重要です。万一に備え、計画的な燃料の備蓄と適切な点検を行い、常に使用可能な状態を保つことが求められます。
ハイブリッド型非常用発電機のメリット
蓄電池は「電気を蓄える」役割を担い、発電機は「電気を生み出す」役割を持っています。この2つの仕組みを組み合わせ、双方の長所を活かした非常用発電機が、ハイブリッド型非常用発電機です。
燃料と蓄電の2つのエネルギー源を活用することで、従来型の発電機にはない多くのメリットを実現しています。ここでは、その具体的なメリットについて解説します。
- 通常の発電機と比較して長時間の電気供給が可能になる
- 燃料補給の手間が少ない
- 二重の備えができる
通常の発電機と比較して長時間の電気供給が可能になる
従来型の非常用発電機は、燃料が尽きると発電を継続できません。しかし、ハイブリッド型非常用発電機では、燃料が切れた場合でも蓄電池が稼働を補うため、電力供給を続けることが可能です。
災害や事故の際には、わずか数分の電力停止が状況を大きく左右することがあります。そのため、長時間の電力供給を実現できる環境を整えることは非常に重要です。
ハイブリッド型の設計により、これが可能となる点は、非常時において大きな安心感をもたらす重要な特長です。
燃料補給の手間が少ない
燃料と蓄電池を組み合わせることで、エネルギー源が2つとなり、各エネルギーの消費負担が軽減されます。その結果、燃料の消費量が抑えられ、補給の頻度が少なくなるというメリットが生まれます。
さらに、蓄電池の充電には、太陽光や風力といった自然エネルギーを利用する方法を採用している機種も多く、補充作業の手間を大幅に削減できます。
このように、燃料補給や蓄電管理の負担が軽減される点は、ハイブリッド型非常用発電機ならではの重要な特徴です。
二重の備えができる
災害時には何が起こるかわからないため、あらゆる状況を想定して備えることが重要です。
たとえば、非常用発電機があっても、確認不足で災害時に燃料が切れてしまうことが考えられます。同様に、蓄電池が備わっていても充電が不十分であれば、電力供給ができない可能性があります。
しかし、ハイブリッド型非常用発電機であれば、燃料が不足しても蓄電池が電力供給を補います。また、充電が不十分であっても、燃料があれば発電機を稼働させることが可能です。
このように、燃料と蓄電池の2つのエネルギー源を持つことで、万一の場合でも柔軟に対応できる「二重の備え」を実現します。こうした特性は、非常時の安心感を大きく向上させるハイブリッド型非常用発電機の大きな魅力です。
非常用発電機の蓄電池の交換時期
ハイブリッド型非常用発電機の導入を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、導入を決める前に必ず知っておくべき重要なポイントがあります。それは、搭載されている蓄電池の交換時期です。
蓄電池の交換時期を把握せずに使用を続けると、劣化に気付けないまま運用してしまい、災害時に機能しなくなるリスクがあります。このような事態では、せっかく導入したハイブリッド型非常用発電機のメリットが失われてしまいます。そのため、蓄電池の寿命を正確に理解し、適切な交換時期を見極めることが不可欠です。
では、蓄電池の寿命はどの程度なのでしょうか?目安としては、10年前後です。ただし、これは一つの目安にすぎません。天候や気候、保存状態、さらには蓄電池の種類によって寿命が大きく変わることがあります。
さらに注意が必要なのは、蓄電池の劣化は外見では判断しにくい点です。見た目に問題がなくても、内部で劣化が進んでいるケースは珍しくありません。では、劣化をどのように判断すればよいのでしょうか?蓄電池の劣化による具体的な兆候には次の2つが挙げられます。
蓄電量の低下
蓄電池が劣化すると、蓄電できる量が徐々に減少します。充電や放電がスムーズに行えなくなった場合、劣化が進んでいる可能性が高いため注意が必要です。
発熱や異臭
劣化が進行すると、充電中や使用中に蓄電池が熱を持つことがあります。また、異臭が発生することもあります。手で触れて熱を感じたり、異臭を確認した場合は、早急な対応が必要です。
蓄電池の劣化を放置すると、故障だけでなく爆発事故などの重大な危険につながる可能性があります。そのため、交換時期だけでなく、日常的な点検とメンテナンスを欠かさないことが重要です。
まとめ
非常用発電機と蓄電池は非常時に電力を供給するという共通の役割を担っていますが、それぞれ異なる特性を持っています。
蓄電池は「電力を蓄える」、発電機は「電力を生み出す」という機能を持ちます。この2つの特性を組み合わせたハイブリッド型非常用発電機は、従来型では実現できない高い信頼性を提供します。
ハイブリッド型非常用発電機は、燃料と蓄電池の2つのエネルギー源を活用することで、長時間の電力供給を可能にします。また、燃料補給の手間を減らし、災害時や緊急時でも安心できる「二重の備え」を提供します。
しかし、蓄電池には寿命があり、使用中に劣化が進む点には注意が必要です。交換時期の目安は10年前後とされていますが、環境や使用状況によって寿命は異なります。劣化の兆候としては、蓄電量の低下や発熱、異臭が挙げられます。
これらの指標を定期的に確認することで、劣化の進行状況を正確に把握できます。これらの兆候が見られた場合には、早めに対応することが安全な運用につながります。
非常用発電機と蓄電池を安全に使用するには、それぞれの特性を理解し、定期的な点検とメンテナンスを行うことが欠かせません。特に、蓄電池の劣化は外見から判断しにくいため、信頼できる専門業者に依頼することが重要です。
小川電機株式会社は、創業60年以上の経験を活かし、非常用発電機の点検やメンテナンスを手掛けています。非常時に確実に稼働するための環境を整えることは、信頼できる業者のサポートがあってこそ可能です。点検やメンテナンスが必要な方は、ぜひ小川電機株式会社にご相談ください。