停電や災害時の備えとして、どの防災設備を導入すればお悩みではないでしょうか?LPガス非常用発電機は、非常時にも電力を確保できるため、防災対策として有効です。
今回は、LPガス非常用発電機の特徴やメリット、他の発電機との違いをわかりやすく解説します。本記事を読むことで、LPガス非常用発電機の導入メリットが明確になり、BCP対策強化にも役立ちます。
LPガスとは
LPガスは液化石油ガスとも呼ばれ、プロパンやブタンなどを主成分とする可燃性ガスを加圧・冷却によって液体化し、容器に詰めて運搬できるガス燃料です。
LPガスは、都市ガスと比較されることが多いです。都市ガスが地下パイプラインを通して各家庭や施設へ直接供給されるのに対し、LPガスはガスボンベに充填され、供給先へ届けられます。そのため、パイプラインが破損していても供給できるという特徴があります。
LPガス非常用発電機とは
LPガス非常用発電機とは、その名のとおりLPガスを燃料として電力を生み出す機械です。
LPガス非常用発電機は、まずLPガスを燃料にしてエンジンを稼働させます。その後、エンジンの回転力によってオルタネータが稼働します。
オルタネータとは、電気を作り出す機器のことです。オルタネータでは、エンジンによって磁石が回転し、その結果コイル内で電磁誘導が発生して電力が生み出されます。
LPガス非常用発電機を設置する際には、「建築基準法」および「消防法」の規定を遵守する必要があります。特に、LPガスボンベの屋外設置や安全距離の確保、通風条件の確認が求められます。
災害が発生すると、最初の3日間は外部からの人や物資の援助を手元に届けるのが困難だといわれています。そのため、それまでの3日間は、被災地内で耐え忍ぶ必要があります。その際、LPガス非常用発電機を備えることで、重要な機器やシステムを維持し、業務の遂行を維持できます。
たとえば、福祉施設や医療関係施設の場合、安全に避難するための照明や医療器具の電源確保などに利用できます。工場では、作業員の安全を確保したり、事業の本格的再開にまでかかる時間を短縮できたりする効果が期待できます。金融機関では、サーバーやパソコンを継続して稼働できたり、室内温度を一定に保ったりできます。
LPガス非常用発電機のメリット
LPガス非常用発電機を導入することには、主に次の4つのメリットがあります。
- 長期間の保存が可能
- 外部から調達しやすい
- エネルギー効率が良い・騒音が少ない
- 補助金を利用できる
長期間の保存が可能
灯油、軽油、ガソリンなどの燃料は、半年間利用せずに保管すると劣化するため、いざというときに非常用発電機が使えない可能性があります。一方、LPガスは燃料と比べて劣化しにくく、長期間保管しやすい性質があります。ただし、ガスボンベや容器の気密性を維持するための定期点検が必要です。
そのため、災害や停電などの非常事態が起こっても、LPガスを用いてすぐに必要な電力を確保できます。
外部から調達しやすい
都市ガスは地下のパイプラインを通じて各家庭や施設へ供給されるため、パイプラインが地震などの災害で損傷した場合、復旧に時間がかかり、その間都市ガスが使えなくなってしまいます。
一方、LPガスはガスボンベやタンクローリー車による運搬が可能です。そのため、道路や配送経路が確保されていれば、災害時でも比較的容易に燃料を確保できます。
このように、周囲のインフラが損傷していても、LPガスを充填したガスボンベを直接持ち込めるため、非常用発電機を安定的に稼働させられます。
エネルギー効率が良い・騒音が少ない
ガソリンや軽油など他の燃料と比較して、LPガスは燃焼時に発生するCO2や大気汚染物質が少ない傾向にあります。そのため、環境負荷を軽減できるクリーンエネルギーとして注目されています。
エネルギー効率の良さは、炭素排出係数によって判断できます。炭素排出係数は、電力を生み出すときにどれだけCO2を排出するかを表す指標であり、この値が小さいほどCO2排出量が少ないことを意味します。
以下の表は、各燃料の炭素排出係数を比較したものです。LPガスの炭素排出係数は16.37t-C/TJであり、他の石炭や原油、ガソリンなどと比べて値が小さいことがわかります。
LPガスの炭素排出係数を基準とした場合、石炭は1.48倍、原油は1.16倍、ガソリンと灯油は1.14倍のCO2を排出します。
燃料種別 | 炭素排出係数(t-C/TJ)[2018年度] | 指数 |
---|---|---|
石炭(一般炭) | 24.29 | 1.48 |
原油 | 18.98 | 1.16 |
ガソリン | 18.71 | 1.14 |
灯油 | 18.71 | 1.14 |
LPガス | 16.37 | 1.00 |
都市ガス | 13.95 | 0.85 |
参照元:エネルギー源別標準発熱量・炭素排出係数(2018年度改訂)の解説 2020.1(自然エネルギー庁)
このように、LPガスは他の燃料と比べてCO2排出量が少ないです。また、LPガス非常用発電機は、ディーゼル発電機など他の発電機に比べて稼働音が抑えられる傾向があり、騒音トラブルを軽減できます。
これらの特徴から、LPガス非常用発電機は、環境や近隣住民への配慮が求められる現場でも利用できるというメリットがあります。
補助金を利用できる
「LPガス非常用発電機の導入に際しては、自治体や経済産業省など、行政機関が提供する補助金・助成制度を活用できる場合があります。
これらの制度は、災害時の電力確保による防災力強化や環境配慮型エネルギーの普及促進などを目的としており、機器導入の初期コストを軽減できる点がメリットです。詳細は、各自治体のウェブサイトや経済産業省のガイドラインをご確認ください。
補助金を活用すれば、比較的低コストで非常用電源を確保し、BCP(事業継続計画)の観点からも十分な備えを整えられるでしょう。
LPガス非常用発電機の種類
LPガス非常用発電機は、次の2種類に分けられます。ここでは、それぞれの概要とメリット・デメリットについて解説します。
- ポータブル発電機
- 定置式発電機
ポータブル発電機
ポータブル発電機は、小型で持ち運びが容易なLPガス非常用発電機の一種です。
メリット
ポータブル発電機は、持ち運びが容易で、設置作業がほとんど不要です。そのため、非常時でも、固定の電源確保が難しい場所へ直接運び込み、素早く電源を確保できます。また、小型であるため、比較的安価に入手できます。
デメリット
ポータブル発電機は軽量化や小型化を優先しているため、供給できる電力量は限られます。
また、手軽に持ち運べますが、屋内施設での利用はできません。LPガス非常用発電機は使用中、一酸化炭素のような有害なガスを排出します。
そのため、屋内で使用すると有害なガスが充満し、最悪の場合一酸化炭素中毒で命を落とす危険性があります。LPガス非常用発電機は、必ず屋外で使用するようにしましょう。
定置式発電機
定置式発電機は、建物の一部や敷地内に固定的に設置されるLPガス非常用発電機です。
メリット
定置式発電機は、大容量で長時間の電力供給が可能です。企業や施設、医療機関など、停電時にも安定的な電力供給が求められる場所でよく採用されます。
デメリット
設置場所が固定されるため、一度設置すると簡単に移動させることは困難です。また、初期費用やスペース確保が必要になるなど、ポータブル発電機と比べて、導入時のハードルが比較的高くなります。
LPガス非常用発電機とディーゼル発電機との違い
非常用発電機には、LPガス非常用発電機の他にディーゼル発電機があります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。
ディーゼル発電機とは
ディーゼル発電機は軽油を燃料として稼働する発電装置です。工場・病院・商業ビルなどの大規模施設で非常用電源として長く利用されてきました。
ディーゼルエンジンは安定した出力と耐久性があるため、長時間の運転や重負荷にも対応可能です。しかし、燃料である軽油はガソリンスタンドや備蓄タンクなど、供給インフラに依存しており、災害時に物流が滞ると入手が困難になるリスクが伴います。
LPガス非常用発電機とディーゼル発電機との違い
ディーゼル発電機は、燃料に軽油を使用するため、通常時は安定した電力供給源として機能しますが、災害などで物流網が分断されると軽油の入手が困難になります。また、軽油の保管期限は約6ヶ月ほどしかないため、いざ、災害が発生した際に使えないこともあります。
一方、LPガス非常用発電機は、燃料をボンベなどで外部から直接持ち込める点が強みです。大きなパイプラインやタンク、専用設備に依存せず、タンクローリー車やボンベを用いて燃料補給が可能であるため、被災地でも比較的容易に燃料を確保できます。
この調達性の違いが、災害時における電力確保の信頼性や事業継続性に大きく影響する要因となっています。また、機種にもよりますが、ディーゼル発電機は、振動や騒音が大きくなる場合があります。それに対して、LPガス非常用発電機は比較的振動や騒音が小さいです。
また、ディーゼル発電機はLPガス非常用発電機と比べ、CO2排出量が多いです。また、硫黄酸化物(SOx)や粒子状物質(PM)など他の有害物質も排出してしまいます。
一方、LPガス非常用発電機はCO2排出量が少なく、硫黄酸化物(SOx)や粒子状物質(PM)などの有害物質を排出しません。
BCP対策としてのLPガス非常用発電機
災害や緊急時における停電は、事業活動に甚大な影響を与えるリスクとなります。そのため、BCP(事業継続計画)を策定し、非常時でも安定的に電力を供給できる体制を整えることが重要です。
LPガス非常用発電機は、長期間の燃料保存性や迅速な供給能力を活かし、BCP対策の一環として高い信頼性を発揮します。ここでは、LPガス非常用発電機がBCP対策にどのように貢献できるのか、具体的に解説します。
BCPとは
BCP(Business Continuity Plan)は日本語で「事業継続計画」を指し、企業が巨大地震や台風、洪水などの自然災害や、大火災、テロ攻撃、システム障害といった緊急事態に直面した際、事業活動への被害を最小限に抑え、中核事業をできる限り速やかに再開・継続するための戦略・計画を指します。
具体的には、平常時から業務上の優先度や代替手段を明確にし、復旧手順を整備することで、非常時にも混乱を抑え、取引先や顧客への影響軽減を図ります。
BCPには、次のような特徴があります。
- 優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
- 緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
- 緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と事前に協議しておく
- 事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
- すべての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図っておく
BCPの策定・運用にあたっては、まずBCPの基本方針を定め、運用体制を確立し、日常的にPDCAを回すことがポイントです。BCPは一度作成すればそこで完成というわけではありません。日常的に適宜、BCPを改善する必要があります。
このように、緊急事態に対して適切に対処できるよう、BCP対策をしておくことが求められます。
BCP対策にはLPガス非常用発電機の導入が向いている
BCPでは、非常時における停電リスクの最小化が重要な課題となっています。
その点、LPガス非常用発電機は、地震や台風、停電などの非常事態が発生した際でも、外部からのLPガス搬入や貯蔵燃料の活用により速やかに電力を供給できます。その結果、事業の中核部分を可能な限り維持・復旧し、生産性やサービス提供の継続が可能です。
また、先ほど解説したように、LPガスは長期保存に適しているうえ、調達ルートも比較的確保しやすいため、燃料不足による発電機停止リスクを軽減できます。こうした特性により、LPガス非常用発電機はBCP対策の一環として、安定した事業継続と復旧対応力の向上に大きく貢献します。
まとめ
LPガス非常用発電機は、停電や災害時でも安定的に電力を確保できる頼もしい非常用設備です。LPガス自体が長期間の保存に適しており、災害時にも比較的調達しやすいことから、他の燃料を用いる発電機と比べて有事の際の燃料リスクを軽減できます。
また、燃焼時の環境負荷が低く、騒音被害も少ない点は、周囲への影響が気になる場面でも有利です。そして、補助金活用による導入コスト低減や、BCP(事業継続計画)対策強化への貢献も期待できます。
用途や規模に応じてポータブル型と定置式を使い分ければ、多様な業態・環境で事業継続を支える有効な手段となるでしょう。
当社小川電機では、災害、停電などの緊急事態に対処するための非常用設備の提供をしております。当社小川電機株式会社は創業60年以上の歴史を誇り、これまでに多くの実績を積み上げています。
状況に合わせたご提案ができることも大きな強みです。これから、非常用設備の導入を検討している方は、お気軽に小川電機までお問い合わせください。