キュービクルは、商業施設や工場、オフィスビル等、多くの電力を使用する施設に必要な電気設備の一種です。キュービクルを設置することで、大量の電気を効率よく使用できます。キュービクルの中でも、消防法に基づく所定の基準を満たしたものは「認定キュービクル」と呼ばれ、それ以外のキュービクルと明確に区別されています。
では、認定キュービクルとそれ以外のキュービクルとでは何が違うのでしょうか?今回は、今後多くの電気を使用するような施設を運営する事業者の方向けに、認定キュービクルとは何なのかわかりやすく解説します。
キュービクルの基本情報
最初に、キュービクルの基本情報について解説します。
キュービクルは、商業施設、店舗、工場、オフィスビル等の、多大な電力を使用するさまざまな施設に設置されている電気設備です。正式名称は「キュービクル式高圧受電設備」といいます。
高圧受電設備とは、送電線から供給される高電圧(約6,600ボルト)を受電し、施設内で使用可能な100ボルトもしくは200ボルトまで降圧する電気設備を指します。施設内で電気を使用するうえで必須の設備といえます。キュービクルは、この高圧受電設備の一種です。
高圧受電設備の中でも特に、キュービクルは機器が金属製の外箱に納められたものを指します。外箱によって保護されているため、風雨や日光等の外部事象から設備を守ることができます。厳密にはこの外箱の名称を「キュービクル」と呼びますが、一般的には単に「キュービクル」というと「キュービクル式高圧受電設備」を指す場合が多いです。
キュービクルを含む高圧受電設備は、契約電力が50kW以上の事業者に対して設置が義務付けられています。該当する事業者の方は、キュービクルの仕組みや役割についてよく知っておく必要があります。
認定キュービクルとは
前章で解説したキュービクルの中には、「認定キュービクル」と呼ばれるものがあります。ここでは、認定キュービクルの定義について解説します。
「認定キュービクル」は、一言で表すと昭和50年(1975年)5月に定められた消防庁告示7号「キュービクル式非常電源専用受電設備の基準」に適合するキュービクルを指します。これだけを聞いても、一体何のことなのかわからないという方が多いでしょう。
以降では、認定キュービクルとは何なのかをご理解いただくために、「非常電源専用受電設備」と「キュービクル式非常電源専用受電設備の基準」について解説します。
非常電源専用受電設備とは
非常電源専用受電設備とは、火災等の災害に備えた非常電源の一種です。
商業施設や工場、オフィスビル等の多くの人が出入りする施設では、万が一火災が発生した場合に備えて、人命救助や初期消火を目的とする消防用設備等が設置されています。たとえば、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備、排煙設備が該当します。ただし、これらの設備は電力で動作するため、何らかの要因で電源設備が喪失した場合には機能せず、人命救助および初期消火に対応できなくなります。
このような場合に活躍するのが非常電源です。非常電源は、常用の電源設備が喪失した場合に、消防設備等の必要な設備へ電力を供給します。
非常電源は熱や外部からの衝撃に強い構造になっている、もしくは常用の電源設備とは異なる場所に保管されているため、機能喪失のリスクを可能な限り低減しています。災害を予防する設備はもちろん大切ですが、発生した場合の対策設備として非常電源を備えておくことも重要です。
また、多くの人が出入りする施設には非常電源の設置義務があるため、施設を運営される事業者の方は非常電源についてよく知っておきましょう。
この非常電源は大きく3種に分類されるのですが、そのうちの一つが「非常電源専用受電設備」です。非常電源専用受電設備の主な役割は、送電線などの外部設備から電力を受け取り、消防用設備など必要な機器に供給することです。
これだけを聞くと、キュービクルを含む受電設備とまったく同じもののように思われるかもしれません。しかし、通常の受電設備と非常電源専用受電設備には明確な違いがあります。
非常電源専用受電設備は、受電設備の中でも特に「火災等の災害発生時にもその機能を喪失しないよう一定の基準を満たしたもの」を指します。非常時に使用できることが非常電源の前提条件なので、耐火性・耐久性の低い受電設備は、非常電源専用受電設備として扱えません。
なお、非常電源には他にも「自家発電設備」と「蓄電池設備」があります。
自家発電設備は、その名のとおり自身で発電した電力を利用するための設備です。内燃機関と呼ばれる、燃料を燃やしてエネルギーを取り出す機関が内蔵されており、ガソリンや軽油、ガス等を使用して発電した電気を施設内の設備に供給します。
蓄電池設備は、非常時に備えて電気を蓄えておく設備です。自家発電設備のように自身で発電する能力はありませんが、予め電気を蓄えておくことで、一定時間は設備に電力の供給が可能です。
このように非常電源には複数の種類がありますが、その一種である非常電源専用受電設備は、外部から受電した電力を設備に供給する設備を指します。
非常電源専用受電設備の基準
先に解説したように、非常電源専用受電設備は火災や関連する事象によってその機能が失われないよう、一定の基準を満たす必要があります。この基準が、先ほど触れた消防庁告示7号「キュービクル式非常電源専用受電設備の基準」です。
この基準は消防法第17条に基づいて設定されたものであり、非常電源専用受電設備として認められるには、この基準に則った審査に合格する必要があります。
非常電源専用受電設備の審査は、一般社団法人日本電気協会によって実施されています。審査には書類審査および現場審査の2種があり、認定を受けるにはこの両方に合格する必要があります。合格した製品には認定銘板が取り付けられるため、認定品か否かを一目で判断できます。
ここでキュービクルの話に戻ります。キュービクルも受電設備の一種であるため、非常電源として使用する場合にはこの審査を受けることになり、審査に合格したキュービクルが「認定キュービクル」と呼ばれることになります。認定キュービクルとは、消防庁告示7号「キュービクル式非常電源専用受電設備の基準」に基づき、品質や耐火性能が認定されたキュービクルを指します。
通常のキュービクルと認定キュービクルの大きな違いは、非常電源として使えるか否かというところです。今後キュービクルの導入を考えている方は、キュービクルを非常電源として使用する場合には、認定キュービクルを選ぶ必要があります。
認定キュービクルと推奨キュービクルの違い
ここまで、認定キュービクルの概要について解説しました。
認定キュービクルに対して、キュービクルの中で前述の認定を受けたわけではないものの、キュービクルとして推奨できる基準を満たしたものを推奨キュービクルといいます。
高圧受電設備としてはどちらも選択肢となりますが、両者にどんな違いがあるかわからないという方も多いでしょう。ここでは、認定キュービクルと推奨キュービクルの違いについて解説します。
キュービクルの推奨制度とは、信頼性の高いキュービクルの普及と、停電事故・感電事故の防止を図ることを目的に、日本電気協会が昭和44年(1969年)に開始した制度です。
具体的には、所轄消防署ごとに定められている「火災予防上支障がないと認める構造を有するキュービクル式変電設備の基準」を満たし、日本電気協会が第三者機関として審査・承認したキュービクルを「推奨キュービクル」といいます。この基準は、外箱の材質や厚さ、固定機構の有無といった、キュービクルの構造に関するものが主です。
推奨キュービクルと比較した認定キュービクルの特徴
先述のとおり、推奨キュービクルは、キュービクルが満足するべき安全基準と、火災予防上支障がないと日本電気協会が認めたものを指します。
一方で、認定キュービクルは、推奨キュービクルと同じく安全基準および火災予防に関する基準を満たし、加えて屋内消火設備に電気を供給する非常電源の設置に関わる基準も満たしたものです。認定キュービクルの認定基準は、推奨キュービクルの審査基準を網羅しているため、推奨キュービクルが有する特徴は、認定キュービクルも併せ持っていることになります。
ただし、認定キュービクルは消防設備とみなされるため、消防署への設置申請時に、消防設備としての届出が必要です。通常、消火活動に関わる設備の設置時には、その仕様や内部機器の状態について、事業者から所轄消防署へ説明が必要になります。
本来、認定キュービクルもこの説明の対象ですが、消防庁告示7号「キュービクル式非常電源専用受電設備の基準」を満たしていることが銘板によって証明されているため、説明を省略することが可能です。
認定キュービクルの注意点
認定キュービクルには、メリットだけでなく注意しなくてはならない点もあります。
キュービクルは使用に伴い経年劣化するため、部品や設備全体の適切な交換が必要です。これは認定キュービクルも同様です。
しかし、認定キュービクルは内部のすべての部品や構造が認定の対象であるため、部品交換をすると認定が取り消される可能性があります。認定が取り消された場合は、再度審査を受けて合格しなければなりません。
部品交換の際には、交換後も基準を満たしていることや再度の審査に向けた準備について、有資格者やメーカーに確認しておきましょう。
まとめ
認定キュービクルの基本情報やメリット、法的な基準について解説しました。要点をまとめると次のとおりです。
- キュービクルは、商業施設や店舗、工場、オフィスビル等、多大な電力を使用する施設に設置される高圧受電設備の一種である。
- 認定キュービクルとは、消防庁告示7号「キュービクル式非常電源専用受電設備の基準」に適合するキュービクルを指し、火災等の災害発生時には非常電源として使用できる。
- 認定キュービクルと推奨キュービクルの違い
- 認定キュービクルは内蔵する機器や構造全てが認定の対象であるため、部品交換によって認定が取り消される可能性がある。
認定キュービクルは品質や安全性が高く、非常電源としても常用としても使用できる点が魅力です。導入時には、認定の維持やメンテナンスの注意点を把握し、正しく運用しましょう。
創業60年以上の実績を持つ小川電機株式会社は、これまでに数多くのキュービクル設置・保守点検を手掛けてきました。当社では、設置工事や修理、部品交換、点検業務など、キュービクルに関するあらゆるサービスに対応可能です。そのため、キュービクルの導入から維持管理まで一括してお任せいただけます。
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