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キュービクルは、発電所や変電所から供給される約6,600ボルトの高圧電気を、100ボルトまたは200ボルトの低圧電気に変換するための重要な設備です。この設備は、商業施設や店舗、工場、オフィスビルなど、多くの施設で電力を安全かつ効率的に利用するために欠かせません。

しかし、キュービクルを安全に設置し、その性能を最大限に引き出すには、「基礎」の役割を正しく理解し、適切に計画・施工することが不可欠です。今回は、キュービクル基礎の必要性、設置基準、そして導入の流れについて詳しく解説します。

キュービクルに基礎が必要である理由

キュービクルの基礎自体は、キュービクルの性能とは関係ありません。では、なぜキュービクルに基礎を設置する必要があるのでしょうか?その主な理由は次の4つです。

  • 振動と騒音を防ぐ
  • 建物への影響を防ぐ
  • 電線のルートを確保する
  • 水やホコリの侵入を防ぐ

振動と騒音を防ぐ

基礎を設置することで、振動と騒音を防ぐことができます。

キュービクル内では、変圧器に大量の電流が流れることによって、内部で磁器ひずみが発生し、電源周波数と連動した振動が起きています。そのため、対策をしないと、キュービクルから発生した振動や騒音が、周囲に影響を及ぼす危険性があります。

この振動と騒音の伝播を防ぐために基礎を設置するのです。

建物への影響を防ぐ

キュービクルの基礎によって、建物への影響を防ぐことができます。

キュービクルを固定する際は、固定用のボルトを打ち込みます。これによって、地震が発生した際にキュービクルが倒れてしまう危険性を防いでいます。

ただし、建物の床面に直接アンカーボルトを打ち込むと、建物の強度に影響を与えてしまいます。キュービクルの下に基礎を設置し、そこにアンカーボルトを打ち込むことで、キュービクルと建物が切り離されるため、建物の強度に影響を与えることはありません。そのため、安心してキュービクルを固定することができます。

また、基礎を設置するとキュービクルの荷重を分散させることができるため、建物への影響が小さくなるという効果もあります。

電線のルートを確保する

基礎を設置することで、電線のルートを確保できます。

キュービクルには、電線やケーブルを入れるためのルートが必要です。使用する電線やケーブルはキュービクルの底面から入れるため、キュービクルと地面の間に空間が必要になります。基礎を設置して、床や地面からキュービクルを浮かせることで、電線やケーブルを入れるルートを作ることができます。

ただし、電線やケーブルを入れるために隙間を設けると、虫やネズミが侵入する危険があります。そのため、侵入防止のネットなどで対策する必要があることには注意が必要です。

水やホコリの侵入を防ぐ

キュービクルの安全性を確保するためには、固定する以外にも大切なことがあります。それが、水やホコリの侵入を防ぐことです。

電気設備にとって、水気は非常に危険な存在です。そのため、キュービクル内に水が浸入しないようにしなければなりません。この水の侵入を防ぐこともキュービクルの基礎の役割です。

基礎を設置すると高さを確保できるため、底面から水が浸入しません。また、地面付近に多く滞留するホコリの侵入を防ぐ効果もあります。

このように、電気設備にとって大敵となる水やホコリの侵入を防ぐことで、キュービクルの故障を減らし、安全性を高められます。

キュービクルの設置基準

キュービクルを設置する際には、建築基準法や消防法に従う必要があります。また、経済産業省が定める「電気設備技術基準」を遵守する必要があります。さらに、自治体ごとに定められた火災予防条例や設置基準、安全基準にも適合することが求められます。

これらの基準を十分に理解した上で、設置場所を決定し、適切な基礎工事を実施することが重要です。

基礎の規格

JIS C 4620:2004(キュービクル式高圧受電設備の規格)では、基礎ボルトは直径は16mm以上であることを求めています。配置は、キュービクルの重量と構造に応じて適切な間隔を確保する必要があります。

また、基礎ボルトはキュービクルの荷重を均等に分散させる設計であることが求められます。これにより、キュービクルの安全性と安定性が確保されます。

また、公共建築工事標準仕様書においても、「配電盤は基礎ボルトで床面に固定する」と明記され、屋外用の場合は浸水防止対策を講じた基礎の上に設置することが求められます。これにより、基礎が配電盤の荷重を安全に支持し、防水性能を確保します。

周囲の保有距離

キュービクルの設置には、自治体の火災予防条例に基づく保有距離の確保が求められます。たとえば、東京都では変電設備の保有距離を3m以上確保する必要があります。また、点検作業を容易に行うためのスペースも確保しなければなりません。

設置時には所管の消防署に届け出を行い、条例に適合することを確認します。もし十分なスペースを確保できない場合には、日本電気協会が規定する仕様に準拠したキュービクルを選定することが求められます。

結露対策

結露対策は、設置環境に応じた適切な方法を採用する必要があります。

屋内用の場合、周囲温度は-5〜+40度以内、24時間の平均温度は+35度以下を維持することが求められます。屋外用では、温度範囲が-20〜+40度となり、同様に24時間の平均温度を+35度以下に保つ必要があります。また、設置場所は屋内外を問わず、標高1,000m以下であることが条件です。

他にも、基礎に直径50mm以上の排水口を設置する、ゲタ基礎に厚さ3mm以上の金属遮蔽板を追加するなど、JIS C 4620の基準に基づいた結露防止策を講じることで、安全性と耐久性を確保できます。

騒音対策

キュービクルの設置では、環境省が定めた騒音規制法や環境基準を遵守し、近隣住民への影響を最小限に抑える必要があります。

特に静かな地域では、適切な離隔距離の確保や、ベタ基礎の採用、遮音壁の設置が推奨されます。また、建物の2階以上に設置する場合は、変圧器に防振ゴムを取り付けることで振動音を軽減できます。

騒音対策としては、周囲との距離を確保するほか、基礎工事では防振ゴムや防振パッドを使用し、遮音壁は高さ2m以上、厚さ100mm以上のコンクリートまたは吸音材を使用することが有効です。また、遮断器は騒音レベルが60dB以下のものを選定することが推奨されます。最終的には、現地での騒音測定を行い、基準値内であることを確認してください。

キュービクルの基礎の構造の種類

キュービクルの基礎には、さまざまな構造があり、それぞれの設置環境や目的に応じて選択することが重要です。主な基礎の種類には次のものがあります。

  • コンクリート基礎
    • ゲタ基礎
    • ベタ基礎
  • 乾式・H鋼基礎

ここでは、それぞれの基礎構造の特徴と用途について詳しく解説します。基礎の選択は、キュービクルの設置環境や運用計画に大きな影響を与えるため、正しい知識を持って検討することが求められます。

コンクリート基礎

コンクリート基礎は、キュービクル設置において最も広く採用されている方法です。現場で型枠を組み、コンクリートを流し込むため、設置場所の条件や広さに柔軟に対応できる点が大きな特徴です。また、施工費が比較的安価である点もメリットの一つです。

ただし、コンクリート基礎の強度を十分に確保するためには、鉄筋を組み合わせた補強が必要です。鉄筋を使用しない場合、費用は抑えられますが、その分、別の補強方法を検討する必要があります。安全性を確保するためには、キュービクル導入業者と事前に基礎強度の基準を確認することが重要です。

たとえば、公共工事の場合、13φまたはD13の鉄筋を縦横300mmピッチで配筋することが標準的な仕様とされています。このような仕様を遵守することで、耐久性と安全性を両立できます。

さらに、コンクリート基礎は「ベタ基礎」と「ゲタ基礎」の2種類に分類されます。それぞれの特徴について、以下で解説します。

ベタ基礎

ベタ基礎は、キュービクル設置で最も一般的に採用されている方法です。平坦なコンクリート基礎の上にキュービクルを設置するため、ゲタ基礎のように基礎の下部に空間が生じない構造が特徴です。

この基礎では、コンクリート内に高圧引込み線用の配管口、低圧幹線用の配管口、アース線用の配管口を設けます。また、キュービクル内部に水が溜まらないように、排水パイプを設置する必要があります。これにより、設置後の運用時における安全性と耐久性を確保できます。

ゲタ基礎

ゲタ基礎は、ベタ基礎よりも簡易な設置方法です。2本の長い基礎を作り、その上にキュービクルを設置する構造で、形状がゲタに似ていることからこの名前が付けられています。

この基礎の特徴は、キュービクルの下部に空間ができる点です。この空間により、電線やケーブルを底面から通しやすくなるメリットがあります。また、施工面積が小さく済むため、費用を抑えられる点も大きな利点です。

一方で、基礎下部に隙間ができるため、虫やネズミなどが侵入しやすいというデメリットがあります。このため、防虫ネットなどの追加措置を講じることが必要です。

乾式基礎・H鋼基礎

乾式基礎・H鋼基礎は、コンクリート基礎を使用できない環境で採用される基礎の形式です。主に屋上設置など重量制限のある場所や、施工が困難な環境で用いられます。

乾式基礎では、市販のH鋼を使用してゲタ基礎部分を補います。これにより、従来のコンクリート基礎に比べて軽量化が図られ、特に重量制限の厳しい設置場所に適しています。また、高低圧配線については専用の配管やダクトを通して収納し、金属用アンカーボルトでキュービクルを固定します。

雨水の吹き込みが懸念される場合は、基礎のすき間を塞ぐか、キュービクルの底板にある通風孔をふさぐ必要があります。これにより、内部設備の防水性と耐久性が向上します。

キュービクルの基礎の導入ステップ

続いて、キュービクルの基礎を設置する過程について解説します。ここでは、特にコンクリート基礎の場合について解説します。キュービクルの基礎の導入ステップは次のとおりです。

  1. 見積もり、申請
  2. 砂利地業
  3. 捨てコンクリート打設
  4. 基礎本体の配筋工事
  5. 型枠設置とコンクリートの流し込み

見積もり・申請

まず、キュービクルの導入を請け負っている事業者に見積もりを申請します。その後、最終的にどの事業者に依頼するか決定します。

砂利地業

砂利地業は、基礎を支えるために地盤を固める作業です。「地突き」や「地固め」と呼ばれることもあります。砂利や砕石を使用して地盤面を安定させ固めていく作業です。

捨てコンクリート打設

捨てコンクリート打設は、基礎を設置する地面を平らにするために実施されます。捨てコンクリート打設は、他にも、型枠の位置出しを簡単にしたり、配筋作業をしやすくしたりするというメリットもあります。

基礎本体の配筋工事

配筋工事は、基礎の強度を充分に確保するために、鉄筋を配置する工事です。なお、配筋工事の際には電線やケーブルを通す配管の立ち上げも実施します。

型枠設置とコンクリートの流し込み

基礎本体の配筋工事が終わると、型枠を設置してコンクリートを流し込みます。コンクリートが固まるまでには、養生期間が必要です。養生期間は季節や天候によって変動するため、気になる場合は工事前に確認してください。

コンクリートが固まったら、型枠を外して基礎が完成します。養生期間は通常7日~14日を目安とし、気温10℃以下の場合は養生シートを使用して凍結を防ぐ必要があります。

キュービクルの基礎工事費用の目安

キュービクルの基礎工事費用は、場所や条件によって大きく異なります。

たとえば、地盤が弱い場所に設置する場合は追加工事が発生して費用が膨らむ可能性があります。また、キュービクルの規模が大きくなるほど基礎工事費用も大きくなります。

そのため、いきなり基礎工事を依頼するのではなく、まずは複数の事業者から詳細な見積もりを取得してください。見積もりでは、基礎設置の規模、使用する材料の品質、必要な付帯工事(排水設備や遮音壁設置など)が明示されているかを確認することが重要です。複数社から見積もり取ると、状況に応じた相場がわかるようになります。

まとめ

キュービクルの基礎について、その必要性や概要、種類、設置基準について解説しました。

キュービクルの基礎は、振動や騒音を建物に伝えないだけでなく、水やホコリの侵入を防ぎ、設備の性能や耐久性を維持するために欠かせない要素です。また、基礎には設置基準があり、安全性や法令を遵守するためにも、これらの基準を正確に満たす必要があります。

基礎構造には、「コンクリート基礎」と「乾式基礎」の2種類があり、コンクリート基礎はさらに「ベタ基礎」と「ゲタ基礎」に分類されます。設置環境や用途に応じた基礎の選択が、キュービクルの運用に大きな影響を与えます。

また、基礎工事費用はキュービクルの規模や設置条件、事業者によって異なるため、複数の業者に見積もりを依頼し、最適な選択を行うことが重要です。

小川電機株式会社では、60年以上の経験を活かし、基礎工事から設置まで最適な提案と確実な施工をお約束します。キュービクルの基礎工事に関するご相談、見積もりについて、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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