キュービクルの火災は絶縁劣化や短絡によって発生することがあり、適切な消火対策が施されていないと甚大な被害を招くリスクがあります。特に高電圧設備を取り扱うキュービクルには、専門的な知識に基づいた安全対策が必要です。
しかし、どのような基準で消火器を設置すれば良いのか、また法的に義務となる場合があるのかについて十分な理解がされていないことが多いのが現状です。
今回は、キュービクルにおける消火器の設置基準や法令の要件を踏まえ、正しい安全対策のポイントを解説します。消防法や建築基準法などの法令に基づく基準について解説しており、法令を遵守した対応が重要です。
キュービクルに消火器の設置義務はある?
消火器の設置は、消防法及び建築基準法、各市町村の火災予防条例に基づいて義務付けられる場合があります。具体的には、建物の用途や延べ面積に応じて、消火器の設置が必要です。ここでは、消火器の設置が必要な防火対象物について解説します。
延面積に関係なく設置しなければならない建物
消防法や建築基準法、および火災予防条例に基づき、一定の建物には延面積に関係なく消火設備の設置が義務付けられています。
たとえば、映画館やカフェ、カラオケボックス、老人ホーム、重要文化財などは延面積に関係なく消火設備の設置が必要です。
延面積150㎡以上の建物
建物の延面積が150㎡を超える場合、用途に応じて消火設備の設置が義務付けられます。たとえば、集会所や展示場、ホテルや旅館、デイサービスの他にも駐車場や倉庫などが対象になります。
ただし、一定数量以上の危険物、指定可燃物を貯蔵し取り扱うものおよび地階、無窓階または3階以上の階で床面積が50m以上のものについては、 上記の規定にかかわらず設置が必要になります。
延面積300㎡以上の建物
延面積300㎡以上の建物についても、規模が大きくなることで火災リスクが高まるため、消火設備の設置が義務付けられる場合があります。たとえば、小学校や中学校をはじめとする各種学校や図書館、他にも、車両の停車場または船もしくは航空機の発着場、神社、寺院、教会その他これらに類するもの、前各項に該当しない事業場が挙げられます。
「延面積150㎡以上の建物」のところでも解説したように、ここでも一定数量以上の危険物、指定可燃物を貯蔵し取り扱うものおよび地階、無窓階または3階以上の階で床面積が50 m以上のものについては、上記の規定にかかわらず設置が必要になります。
キュービクル設置に消火設備が必要な理由
キュービクルは高電圧の受電設備であり、短絡や絶縁劣化による電気火災のリスクが高いため、消火設備が必須です。また、建築基準法や消防法に基づき、漏電・感電や波及事故の予防のためにも消火設備の設置が重要です。
キュービクルが引き起こす火災事故
キュービクルなどの高圧電力設備では火災が多く発生し、その70%は絶縁劣化や接続不良などによる電気火災だといわれています。
キュービクルが原因で発生する火災には「波及事故」があります。これは、キュービクル内部で発生した火災や障害が他の設備や周辺環境にまで広がる事故です。
こうした事故による被害は非常に深刻であり、適切な電気絶縁の維持、定期的なメンテナンスおよび消火設備の設置がその対策として重要です。
キュービクル設置に伴い必要とされる安全性
キュービクルの事故は危険性が高く、二次災害も非常に危険です。そのため、キュービクルには高い安全性が強く必要とされます。
キュービクルの設置・運用に関しては、次のような安全対策が電気事業法により定められています。
- 保安規定の制定
- 電気主任技術者の選任
- 日々の定期的な点検および年次点検の実施
- 作動確認や破損・損傷の有無の確認
キュービクルの安全対策を行うと、コストがかかります。しかし、キュービクルの使用に伴う安全対策を怠ると故障や破損があると災害や事故を引き起こす可能性が非常に高くなります。結果的として、修繕費などで安全対策の費用よりコストがかかる可能性も高くなるため、事前に対策することが重要です。
万が一、火災などの事故が発生した場合でも安全対策を確実に行っていることで被害を最小限に抑えられる可能性が高くなります。したがって、「事前の安全対策」「定期的な保守・点検」は必須だといえます。
キュービクルに設置する消火器の基礎知識
キュービクルの消火設備設置は、消防法や火災予防条例に基づいて規定されています。設置基準は建物の用途や危険物の有無によって異なるため、具体的な基準はこれらの法令を参照する必要があります。
なお、一般に「100㎡ごとに設置」とされることがありますが、これは正確ではありません。また、電気火災に適した消火器を設置することが必須です。
キュービクル設置時には、次のような基準を確認する必要があります(消防法施行規則第6条〜11条)。
- 各階に消火器を設置する
- 防火対象物から20m以内の場所に設置する
- 少量危険物・指定可燃物を扱う設備などに追加設置する
- 使用しやすく避難に支障のない場所に設置する
- 床面の高さ1.5m以下の位置に設置する
このように、複数の基準があるため、事前の確認が不可欠です。
避難経路の確保と通路の安全性
キュービクル周辺の通路には障害物がないようにし、定期的な点検で避難経路を確保しましょう。
また、消火器は防火対象物から20m以内(大型消火器は30m以内)の場所に設置し、避難経路を妨げない位置に配置する必要があります。消火器や標識の位置も定期的に見直し、視認性と安全性を確保しましょう。
このように、事前に避難経路を確保し、スムーズな避難ができるよう対策を徹底することが大切です。
消火器と標識の配置基準
消火器は避難の妨げにならない位置に設置し、標識を1.5m以下の高さに配置して視認性を確保しましょう。標識は床面から1.5m以下の高さに配置し、誰でも消火器の位置を即座に確認できるようにします。配置場所を定期的に見直し、視認性と安全性を常に保つことが大切です。
その他の注意点
消火器は転倒や破損を防ぐため、地震や衝撃に耐えられるようしっかり固定して設置する必要があります。
また、適切な設置環境で管理し、消火器の性能を維持するために、定期的な外観チェックを行いましょう。消火器の能力や使用方法を事前に把握することで、万が一の際に安全に使用できます。
キュービクルに設置する消火器の種類
キュービクルの電気火災には、粉末消火器や二酸化炭素消火器が適しています。適切な消火器を選ぶことが火災対策の基本です。
種類
消火器には、「粉末消火器」「水消火器」「強化液消火器」など、さまざまな種類があります。火災のタイプに応じて適切な消火器を選ぶことが重要です。火災は一般に次の3種類に分類されます。
- 普通火災:木材や紙、繊維などが燃える火災
- 油火災:灯油やガソリンなどの可燃性液体が燃える火災
- 電気火災:配電盤やコンセントなどの電気設備が原因で起こる火災
キュービクルで発生しやすいのは電気火災であり、対応するには粉末消火器や二酸化炭素消火器が適しています。これらは電気を通さず、電気機器を安全に消火できるため、キュービクルには電気火災対応の消火器を設置することが基本です。
一方、強化液消火器は油火災には有効ですが、電気機器の故障や漏電を引き起こす可能性があるため、キュービクルでの使用は避けるべきです。
効果的な消火器
電気火災には、電気を通さず鎮火効果が高い粉末消火器や二酸化炭素消火器が最適です。これらは電気機器の安全を保ちながら迅速に消火できます。火災リスクに応じて、適切な種類の消火器を選ぶことが火災予防の基本です。
一方、強化液消火器は油火災には効果的ですが、電気機器に使用すると故障や漏電の原因になる可能性があるため、電気火災には不向きです。電気火災では、必ず専用の消火器を使用し、機器の損傷や二次災害を防ぎましょう。
耐用年数
消火器の耐用年数は通常5〜10年です。これを過ぎると、腐食や破損が進み、正常に作動しないリスクが高まります。そのため、耐用年数が過ぎた消火器は速やかに交換し、安全性を確保することが重要です。
また、消火器は定期点検により性能を維持する必要があります。万が一の際に確実に使用できるよう、10年を目安に交換することをおすすめします。
まとめ
キュービクルに消火器は必要なのか、キュービクルと消火設備の関係について解説しました。
キュービクル設置時には、防火対策と消火設備が欠かせません。キュービクルにおける消火器の設置基準を理解し、消防法や建築基準法などの法令に基づく安全対策を取ることで、電気火災のリスクを低減し、事故を未然に防ぐことができます。
また、キュービクル設置は、実績豊富な業者に依頼することが大切です。小川電機株式会社は60年以上の経験をもとに、最適な提案をいたします。安全な運用をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
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