キュービクルは、高圧電力を低圧に変換し、日常使用に適した電圧へと調整する装置です。しかし、電力の使用が不均等になると、無効電力が増加し、電力を無駄に使用してしまうことがあります。この結果、力率が低下し、電力の効率的な利用が損なわれることになります。
この問題を解決するために、高圧進相コンデンサの導入が推奨されます。これは、力率を改善し、無効電力を減らして電気料金を削減する効果があります。今回は、キュービクルの利点、高圧進相コンデンサの機能、選定方法などについて解説します。
キュービクルとは
キュービクルは高圧受電設備の核心部で、金属製の箱の中に高圧電気機器を収容しています。電力の安全な配分と制御を担い、断路器や接地スイッチなどの重要な機器が組み込まれています。
これにより、商業施設や工場、オフィスビルなどでの安全な電力使用が可能となり、電気事故が発生した際には、これらの機器が自動的に電力を遮断し、周囲の施設や機器への影響を防ぎます。
高圧進相コンデンサの概要と種類
高圧進相コンデンサは、電力系統の力率を改善し全体の電力効率を最大化する重要な装置です。ここでは、高圧進相コンデンサの概要と種類について解説します。
高圧進相コンデンサとは
高圧進相コンデンサ(通称「SC(Static Capacitor)」)は、キュービクルや受電所などで使用される重要な電気機器です。電力会社から供給される高圧電力を効率的に使用するために不可欠であり、変圧器によって電圧を下げてから動力源として使用されます。
多くの負荷は力率の遅れが原因で無効電力が発生し、電力の無駄が生じますが、高圧進相コンデンサはこの位相を進めることで力率を改善し、効率を大幅に向上させることができます。これにより、電気料金の割引を受けることができます。
ガス封入式
ガス封入式高圧進相コンデンサは、内部に窒素などのガスを封入し、絶縁性能を向上させた進相コンデンサです。無害で不燃性の窒素ガスを使用し、「乾式」とも呼ばれています。
ガスを使用することで、絶縁油を必要とせず、絶縁性能を高めつつ、電力システムの安定性と安全性を向上させます。また、電気的短絡やシステム障害のリスクも低減します。
火災などの二次災害の心配がなく、環境にも優しいため、病院や大規模施設での使用に適しており、運用寿命の延長も期待されます。
油入自冷式
油入自冷式高圧進相コンデンサは、内部を絶縁油で満たして冷却機能を持たせた進相コンデンサです。この絶縁油により、熱が効率的に逃がされ、装置の寿命が向上します。
この設計により、コンデンサの温度は低く保たれ、性能が維持されるため、装置の信頼性と寿命が向上します。
絶縁油は、その優れた誘電率と熱伝導率により、装置を小型軽量かつコスト効率良くする効果もあります。ただし、古いモデルには有害なPCBが含まれている可能性があるため、撤去時には特別な注意が必要です。
高圧進相コンデンサの役割・メリット
続いて、高圧進相コンデンサの役割とメリットについて解説します。
- 電流の低減と損失の削減
- 力率改善による電気料金割引
電流の低減と損失の削減
高圧進相コンデンサは、電力システムにおける電流の低減とエネルギー損失の削減を効果的に実現します。不要な電力消費を減らし、システム全体の効率を高めることが可能です。
具体的には、電動機には誘導成分が存在し、電気がコイルを流れるときに無効電力が生じることがあります。無効電力が増加すると、全体の電力消費量(皮相電力)も増え、それに伴い力率が低下します。力率が低下すると、電力会社は必要以上の電力を供給しなければなりません。
高圧進相コンデンサを設置することで無効電流を流し、力率の遅れを改善することが可能です。このようにして、電力の効率が向上します。
力率改善による電気料金割引
高圧進相コンデンサを設置することで、電力系統の力率が改善され、無効電力が抑制されます。その結果、電力の効率的な使用が促進され、電力消費の無駄を減らすことができます。力率の改善により、電気料金の削減が期待でき、次の方法で割引が適用されます。
- 力率改善
- 料金体系
- コスト削減
力率改善
高圧進相コンデンサを設置することで、この比率が改善され、供給される電力がより効率的に使用されます。これにより、供給される全体の電力量が減少し、無駄がなくなります。
コスト削減
力率が向上すると、消費される電力量が最適化されるため、電力会社による電力供給も効率化されます。結果として、消費者は基本料金の削減だけでなく、使用量に基づく料金も削減されるため、全体的な運用コストが低下します。
これらのプロセスを通じて、高圧進相コンデンサは電力利用の効率化だけでなく、経済的利益ももたらします。これにより、特に電力消費が大きい企業や施設では、大幅なコスト削減が期待できます。
高圧進相コンデンサを設置する際の注意点
高圧水槽コンデンサーを設置する際は、注意すべき点があります。ここでは、その注意点の概要について解説します。
- 直列リアクトルを取り付ける
- PCB含有の有無を確認する
- 保安点検を実施する
直列リアクトルを取り付ける
直列リアクトルは、コンデンサと直列に接続される電気機器で、主に突入電流や高調波を抑制する役割を果たします。
高圧進相コンデンサを電路に投入した際には、定格電流の数倍もの突入電流が発生し、これが電力システムに悪影響を及ぼすことがあります。また、交流波形のひずみや高調波の増加により、電気機器や設備が損傷するリスクが生じます。直列リアクトルを設置することで、これらの突入電流や高調波を効果的に抑制し、電力システムの安定性を向上させるとともに、コンデンサや他の電気機器を保護します。
直列リアクトルと高圧進相コンデンサの同時設置は、1998年のJIS(日本産業規格)および2014年の高圧受電設備規定に基づいて推奨されており、特に大規模施設や工場などでの使用においては必須とされています。
高圧進相コンデンサを導入する際は、直列リアクトルの同時設置を推奨します。これにより、電力システム全体の効率を最適化し、機器の寿命を延ばすことが期待できます。
PCB含有の有無を確認する
高圧進相コンデンサのPCB(ポリ塩化ビフェニル化合物)含有の有無を確認しましょう。PCBを含む古いコンデンサは環境へのリスクがありますので、設置または交換前に専門の検査を行い、コンデンサのPCB含有状況を確認してください。
PCBは環境汚染物質として知られ、健康に対する潜在的な危険性があります。その害悪性から、1970年頃に日本での製造が禁止されましたが、それ以降のコンデンサには使用されている可能性があります。そのため、コンデンサの銘板を確認し製造年月をチェックすることが重要です。
PCBが含まれている場合、通常の方法では廃棄できず、環境省の定める「PCB 特措法」に基づき適切に処理する必要があります。詳細は、環境省のウェブサイトを参照してください。
保安点検を実施する
一般社団日本電機工業会は、高圧進相コンデンサの更新時期を15年と推奨しています。これは、設備が全負荷で常時稼働し、開閉時に大きな突入電流や過渡過電圧にさらされるためです。
耐用年数を超える使用は、電力料金の無駄遣いだけでなく、故障や事故のリスクも高まります。定期的な保安点検を行い、思わぬ事故や損失を未然に防ぐことが重要です。
キュービクルや高圧進相コンデンサの保安点検には、次のものなどが挙げられます。
- 油漏れ
- 電流の異常
- 外箱の異常な温度上昇
- 外観の確認(変形、損傷、ふくらみ、錆、腐食)
直列リアクトルの異常音や接続端子の過熱変色、緩み、断線のチェックも重要です。
点検は月次または年次で行う必要があり、「電気事業法」により電気主任技術者の監督の下で実施され、専門業者への委託も可能です。これらの点検を実施することにより、設備の信頼性を保ち、効率的な運用を確保することが可能です。
まとめ
高圧進相コンデンサとキュービクルの重要性、機能、および適切な保守の必要性について詳しく解説しました。
特に、高圧進相コンデンサの最大の特徴は、力率の改善です。電気料金のコストカットを検討している場合は、設置を検討してください。
「キュービクルの設置を検討している」「安心して依頼ができる業者を探している」という場合は、当社小川電機株式会社にお問い合わせください。
小川電機株式会社は、「電気施工管理技師」「電気工事士」など社員の専門資格取得を積極的に推進しており、キュービクルに関しては国内トップクラスの知見を持つ企業です。創業60年以上の歴史を誇り、これまでに多くの実績を積み上げています。
キュービクルの設置をお考えの場合は、まずは小川電機にお気軽にご相談ください。
キュービクル
について
専門家にご相談頂けます
小川電機のキュービクル専門家に、設置費用の見積もり・トランス容量・設置スケジュールなど、何でもご相談頂けます。
※電話受付:平日 8:30〜17:30
※前田宛にお電話頂けるとスムーズです