キュービクルを設置する際は、法令に準拠した手続きを適切に理解し、遵守することが求められます。中でも、消防署への届出は重要な手続きの一つです。
高圧の電気を低圧に変換し、建物に電気を供給する重要な役割を持つキュービクルの設置には、さまざまな安全基準が定められています。これらの手続きを怠った場合、後にトラブルを招くリスクが高いため、適切に理解し対応することが重要です。
また、キュービクルは火災や感電といったリスクがあるため、「電気事業法」および「建築基準法」に基づいた手続きと、適切なメンテナンスの実施が義務付けられています。
安全に電力を使用するためにも、この2つは欠かせません。今回は、キュービクルの設置と交換時に必要な届出と、安全に運用するための基礎知識を解説します。キュービクルの設置や交換をご検討中の方は、ぜひご一読ください。
キュービクルを設置するときに知っておきたい2つの法令
キュービクルを安全に設置・運用するには、関連する法令を理解しておかなければなりません。特に重要なのが「建築基準法」と「消防法」の2つです。
これらの法律では、キュービクルの設置や運用において遵守すべき基準や手続きが定められています。違反した際には、安全性を損なうリスクが高まるだけでなく、罰則の対象になる可能性もあります。まずは、建築基準法と消防法の2つの法令について解説します。
建築基準法
キュービクルを設置する際には、建築基準法に従うことが求められます。建築基準法には、建物や構造物における安全性や耐震性、防火性などの基準が規定されており、キュービクルを設置する際には、建築基準法で定められた基準を満たさなければなりません。
特に重要となるのは、設置場所の選定、耐火性能の確保、そして周囲の安全スペースの確保です。キュービクルが原因となる火災を予防するためにも、法令を遵守し、安全な運用に努めなければなりません。
また、設置後の保守や点検においても、建築基準法に準じた対応が求められます。
消防法
キュービクルは、高圧電流を扱うため、故障やトラブルが発生すると火災に発展するリスクがあります。そのため、消防法では防火管理の観点から厳格な基準が定められています。
定められている基準を満たしていないと、火災時のリスクが増大するだけでなく、法律違反になる可能性もあるため注意が必要です。法律に違反していると判断されると、万が一、火災が発生しても保険が使えない可能性があるため、事前に確認しておく必要があります。
キュービクル設置前に必要な消防への届出
キュービクルを設置する際には、消防法に基づき、管轄の消防署への届出が必要です。
高圧電流を扱うキュービクルには、電気火災のリスクがあります。そのため、設置場所の防火対策や避難経路の確認など、法令に準じた安全基準を満たしておかなければなりません。
また、キュービクルによっては防火設備や消火設備の設置義務が生じることがあり、これらの設置義務を満たしているか、消防署が確認します。
消防署による確認の前提として、消防署への届出は不可欠です。届出を怠ると法的な問題だけでなく、火災や事故発生時に重大な責任を問われる可能性があるため、リスクを回避するためにも適切な届出が必要不可欠です。
電気設備設置の届出
キュービクルを設置するときは、消防署に電気設備設置の届出を行い、検査を受けなければなりません。
電気設備設置の届出は、電気火災などのリスクを回避するために義務付けられているもので、電気設備の設置状況などを事前に審査指導することにより、安全性を確保することを目的としています。
なお、電気設備設置の届出は、設置の7日前までに行わなければなりません。届出ができていないと、設置工事を実施することはできません。設置を決定次第、速やかに届出の準備を進め、工事前に余裕を持って対応することを推奨します。
非常電源として活用する場合の届出
キュービクルは、非常電源として活用することもできます。ただし、非常電源として活用する場合は、消防法第17条に基づく非常電源設置届出書の提出が必要です。
非常電源として活用すれば、災害や停電時でも重要な設備を維持することができます。しかし、非常電源として活用する場合は、消防法によって定められている厳格な基準をクリアしなければなりません。
非常電源として使用するキュービクルには、停電時に自動的に電源を切り替える機能や、一定時間電力を安定供給できる性能が求められます。これらの基準を満たしていることを消防署へ届け出て、審査をクリアする必要があります。
病院や大型施設など、公共性の高い場所では非常電源の設置は必要不可欠であるため、見落としてはならない重要なステップです。
建築確認時における消防同意
キュービクルを新たに設置する場合、建物の建築確認申請に関連して、消防署の「消防同意」が必要となることがあります。これは、建築基準法に基づき、キュービクルが設置される建物が防火・避難対策などの安全基準を満たしているか確認するための手続きです。
設置場所によっては、消防法に基づく消火設備の設置や防火対策が求められます。また、消防同意の審査においては、避難経路の確保や、万が一の火災時の対策がしっかりと取られているかチェックされます。定められた基準を満たしていないと、消防同意は得られません。
建築確認時に消防同意が必要となる場合は、建築計画の段階で早めに消防署と連携し、適切な防火措置について確認しておくことが重要です。
キュービクル設置に必要なその他の届出
前章では、キュービクルを設置する際に必要な消防署への届出について解説しました。しかし、キュービクルを設置するときは、消防署以外への届出も必要になります。ここでは、キュービクル設置に必要なその他の届出について解説します。
経済産業省への届出が必要になる
キュービクルは自家用電気工作物に該当するため、設置にあたっては「電気事業法」に基づき、所定の手続きが必要です。これらの手続きは、経済産業省または所管の経済産業局に対して行われます。
前述の消防署への届出に加えて、経済産業省への届出が必要となります。特に、管轄が複数の経済産業局にまたがる場合は、経済産業大臣への届出が求められることがあります。
届出が必要な書類
キュービクルの設置にあたっては、以下の書類を作成し、経済産業省または所管の経済産業局に提出する必要があります。
- 主任技術者の選任及び届出:キュービクルの保安管理を担当する主任技術者の選任が必要です。選任後、速やかに届出を行います。
- 主任技術者選任許可申請書:主任技術者を選任する際には、この申請書を提出し、許可を受けなければなりません。
- 主任技術者兼任承認申請書:同一人物が複数の事業所で主任技術者を兼任する場合、経済産業省への承認申請が必要です。
- 保安規程届出書:電気工作物の保安管理に関する規程(保安規程)を定め、これを経済産業省に届け出ます。
これらの書類を提出しないままキュービクルを設置すると法律違反になるため注意が必要です。
なお、主任技術者とは電気主任技術者を指し、キュービクルの設置および運用において不可欠です。電気主任技術者を雇用するか、外部委託するなどの方法で人材を確保しておきましょう。
提出書類は、経済産業省が提供する「電気設備の申請・届出等の手引き(経済産業省)」より、ワードまたはPDF形式でテンプレートをダウンロード可能です。すべてを自分で作成する必要はありません。
自分で作成しても問題ありませんが、書類に不備があると届出を受け付けてもらえないこともあるので、無駄な手間を省くためにもテンプレートの使用をおすすめします。
キュービクルを安全に使用するために知っておきたい消防に関する知識
キュービクルを安全に使用するには、「メンテナンスの重要性」と「消火器の設置」について理解しておかなければなりません。
メンテナンスは事故や故障を防ぎ、消火器の設置は漏電や感電などの事故や波及事故を防止するうえで重要な役割を果たします。安全に使用するためにも、この2つを理解したうえでそれぞれの対策を実施しましょう。
メンテナンスの重要性
キュービクルを設置する際は、電気事業法により保安規定の制定や電気主任技術者の選任が義務付けられています。
また、月次点検と年次点検を実施して安全に作動するのかを確認しなければなりません。定期的なメンテナンスによって、故障や事故を防ぐためです。
点検やメンテナンスを怠ると、故障に気付かないまま使い続けることになり、最悪の場合には事故が発生してしまう恐れもあるので、安全性を確保するため必ず実施してください。
点検やメンテナンスを外部委託する際には一定の費用が発生しますが、事故や故障による損害と比較すれば、その費用は最小限に抑えられます。信頼できる業者を探して、しっかりと点検とメンテナンスをしてもらいましょう。
消火器の設置
キュービクルは高圧の電気を使用するため、火災のリスクをゼロにすることはできません。だからこそ、火災対策が重要です。万が一の火災に備え、適切な対策を講じることが、火災の拡大防止に直結します。
建物によっては、消火器の設置が義務付けられています。屋外に設置されているキュービクルには設置義務がないと考える方もいるかもしれません。しかし、屋外に設置しているキュービクルには「付加設備」の規定が該当するため、設置する必要があります。
付加設備とは、上記の設置基準とは別に設定されている消火器設置に関するルールのことです。下記の保管場所においては、消火器の設置が義務付けられているため注意が必要です。
- 灯油やガソリンなどの少量危険物
- 指定可燃物
- ボイラー室、乾燥室のような多量火気使用場所
- 電気設備
キュービクルは電気設備に該当するため、付加設備に関する規定が適用されます。
設置する消火器の大きさや消火薬剤の種類などは、建物の用途や延べ床面積に応じて算出しなければなりません。計算したうえで適切な本数を設置してください。屋内消火栓やスプリンクラー設備などを設置している場合は、消火器の本数を減らすことができます。
なお、消火器を設置する際は、下記の基準を満たさなければなりません。
- 各階ごとに消火器を設置する
- 防火対象物から歩行距離で20m以内(大型消火器の場合は30m)に設置する
- 建物の用途に適応した消火器を設置する
- 通行や避難に支障がない場所に設置する
- 容易に持ち出せる場所に設置する
- 床面から1.5m以下の高さに設置する
- 屋外に設置する場合は格納箱に収納する
- 消火器をすぐに認識できるように案内図記号を設置する
消火器を設置する際は、各市町村が定める「火災予防条例」を確認するようにしてください。なぜなら、市町村によって消火器の設置基準や義務の内容に違いがあるからです。正しい消火器設置のためにも、わからないことや気になることがあれば、管轄する消防に確認してください。
まとめ
キュービクルを設置するときは複数の届出が必要です。届出を怠ったり、届出を忘れたりしてしまうと法律違反になるので、必要な届出を把握して速やかに提出してください。
なお、必要な届出は次のとおりです。
消防署への届出
- 工事の7日前までに「電気設備設置届出書」を提出
- 非常電源として使用する場合は、追加で「非常電源設置届出書」を提出
- 建築確認申請時における「消防同意」の取得
経済産業省への届出
- 主任技術者の選任及び届出
- 主任技術者選任許可申請書
- 主任技術者兼任承認申請書
- 保安規程届出書
キュービクル設置には、複数の届出が必要なうえに、書類によって提出先も変わるので、一つひとつを正確に把握して、届け忘れがないように注意が必要です。届出はキュービクル設置に欠かせない作業なので、キュービクルの設置を決めた段階で優先的に進めるようにしましょう。
なお、記載内容を間違えたり、記載漏れがあったりすると届出が受理されない場合があるので、わからないことがあれば管轄の消防署や経済産業省に問い合わせて理解してから届け出ることをおすすめします。どうしてもわからない場合や、時間がない場合は業者に任せるのも一つの手です。
小川電機株式会社は創業60年以上で多くの実績と経験を積み上げ、多くのキュービクル工事や設置に携わっています。また、点検やメンテナンスだけでなく、修理や交換にも対応しているので、キュービクルに関することをすべて任せることが可能です。キュービクルに関してお悩みの方は、気軽に小川電機へご相談ください。
キュービクル
について
専門家にご相談頂けます
小川電機のキュービクル専門家に、設置費用の見積もり・トランス容量・設置スケジュールなど、何でもご相談頂けます。
※電話受付:平日 8:30〜17:30
※前田宛にお電話頂けるとスムーズです