キュービクルは、商業施設や工場、オフィスビルなど、多くの電力を使用する施設に必要な電気設備です。キュービクルの設置で、大量の電気を効率よく使用できます。
キュービクルの導入を検討している方は、「なぜキュービクルが必要なのか?」と疑問を持つことがあるでしょう。今回は、多くの電気を使用する施設でキュービクルが必要な理由を解説します。今後、多くの電気を使用するような施設を運営する事業者の方にご一読いただきたい内容です。
キュービクルとは
まずは、キュービクルの概要を解説します。
キュービクルの正式名称は「キュービクル式高圧受電設備」といい、電気設備の一種です。一見すると、キュービクルは金属製の箱ですが、中には電気設備が収納されており、これら一式をキュービクル式高圧受電設備といいます。
なお、元々「キュービクル」は外箱を指す言葉ですが、一般的にキュービクルというと、この外箱と内蔵される設備一式を指すことが多いです。
キュービクルは、主に商業施設や店舗、工場、オフィスビル等など、電力を多く使用する施設に設置されます。基本的に、一般家庭にキュービクルを設置することはありません。多くの電気を使用する施設にキュービクルが必要な理由は、後ほど解説します。
電力供給のメカニズム
キュービクルは電気設備の一種であり、設置される施設の電力使用に関係すると解説しました。では、具体的にはどのような役割があるのでしょうか?ここでは、キュービクルの役割を理解いただくために、先に電力供給のメカニズムを解説します。
発電~送電の仕組み
発電所で生成された電気は、長い過程を経て私たちのもとへ届きます。その過程について解説します。
まずは、発電所で生成されたばかりの電気に注目します。私たちが使用している電気は主に100ボルトもしくは200ボルトの低電圧ですが、発電所で生成された電気は25万ボルト~50万ボルトの超高電圧であり、そのまま使用することはできません。電気は、複数の変電所を経て段階的に降圧され、使用可能な電圧になります。
段階的な降圧の結果、街中の送電線に届くころには約6,600ボルトまで減圧されますが、100ボルトや200ボルトと比較するとまだまだ高電圧です。高電圧で送電を行う理由は、送電によるエネルギーロス(電流値の二乗に比例)を小さくするためです。この電気をそのまま使用することはできないため、どこかでさらに電圧を下げる必要があります。
電力の契約方式
約6,600ボルトの高電圧を使用可能な電圧まで減圧する方法は、施設が締結している電力の契約方式によって変わります。
電力契約には、「低圧受電契約」と「高圧受電契約」の2種類があります。これらは主に、受電する電圧が異なります。
低圧受電契約の場合、約6,600ボルトで送電された電気を、電柱に付帯している柱上変圧器によって、使用可能な100ボルトまたは200ボルトに降圧してから受電します。この契約方式は、主に一般家庭や小規模の事業所に採用されている契約方式です。
一方、高圧受電契約の場合、送電された約6,600ボルトの電気をそのまま受電し、施設内の電気設備で100ボルトもしくは200ボルトまで降圧します。こちらは、多くの電力を使用する商業施設や店舗、工場、オフィスビル等の施設に向けた契約方式です。
キュービクルはなぜ必要なのか?
前章では、前提知識として電力供給のメカニズムと、電力の契約方式について解説しました。ここでは、キュービクルの役割と必要性について解説します。
キュービクルの役割
先ほど解説したように、高圧受電契約の場合、事業者側は約6,600ボルトの高電圧を受電することになります。しかし、高電圧の状態では使えないため、使用可能な100ボルトもしくは200ボルトまで降圧する必要があります。これがキュービクルの設置が必要な理由です。
送電された高電圧を受電し、使用可能な電圧まで降圧する電気設備が高圧受電設備です。高圧受電設備は、施設内で電気を利用するために必要な設備です。
この高圧受電設備の一種がキュービクルです。高圧受電設備の中でも、特に金属製の外箱に収納されたものを指し、外箱の中には高圧受電盤や変圧器(トランス)、高圧進相用コンデンサーなど、受け取った電力を施設で効率的に使うための機器が内蔵されています。
他にも、外箱がなく、電気設備が露になっている開放型の高圧受電設備もあり、施設によって開放型とキュービクルを選択して使用しています。
キュービクルが必要になる電力・施設規模
「キュービクルが必要=高圧受電契約を結んでいる」ということになりますが、そもそもなぜ高圧受電契約を結ぶ必要があるのでしょうか?
高圧受電契約を結ぶ主な基準は、施設での電力使用量です。一般的に、電力使用量が50kW以上である場合、電力会社の規約により、高圧受電契約が義務付けられています。ただし、地域・電力会社によって細かな規約が異なるため、電力会社や電気工事業者に確認が必要です。
電力使用量50kW以上となる施設の例としては、主に次のものが挙げられます。
- 大規模オフィスビル
- 工場
- 大型商業施設
- 病院
- 宿泊施設
大規模オフィスビル
多くの人が行き来する大規模オフィスビルでは、電子機器や空調設備、エレベーター等の稼働に大量の電力を使用します。ただし、オフィスの規模によっては低圧受電契約で良い場合もあります。
工場
工場では、産業機械やクレーンなどの大型設備の稼働に膨大な電力を使用するため、多くの場合は高圧受電契約を結ぶことになります。
かえって、工場の中にはキュービクルで対応可能な電力使用量を超えていることもあります。こういった場合は、より多くの電力量を処理できる開放型の高圧受電設備を使用することが多いです。
大型商業施設
デパートやショッピングモール等の大型商業施設では、空調設備やエレベーター、冷蔵・冷凍設備等を多用するため、電力使用量が多くなります。比較的小型の商業施設であるスーパーマーケットやコンビニの場合でも、店舗の大きさや取り扱う商品によってはキュービクルが必要になることがあります。
病院
病院では、24時間体制で医療機器や空調設備を稼働させるため、膨大な電気が必要です。特に大きな総合病院の場合は、稼働させる設備数が多くなるため高圧受電設備の設置は必須といえます。ただし、診療所等、施設の規模により、低圧受電契約で対応できることもあります。
宿泊施設
旅館やホテルといった宿泊施設も、24時間体制で空調設備やエレベーター等を稼働させているため、大量の電気が必要です。施設の規模によっては低圧受電契約でも対応できますが、一般的に100部屋以上の大規模な宿泊施設には高圧受電契約が必要です。
キュービクルのメリット
最後に、キュービクルのメリットを、高圧受電契約と設備そのものの2つの視点から解説します。
高圧受電契約のメリット
低圧受電契約と比較したときの高圧受電契約のメリットは、電気料金の単価が安いことです。
低圧受電契約の場合、電柱に付帯する柱上変圧器を経由して、低電圧の状態で受電を行います。この柱上変圧器は電力会社の設備であるため、低圧受電契約の料金には本設備の使用量も含まれています。
一方で、高圧受電契約の場合は柱上変圧器を使用していない分、電気料金の単価が安く設定されています。
キュービクルならではのメリット
続いて、高圧受電設備の一種である開放型と比較した場合のキュービクルのメリットを解説します。
- 安全性が高い
- 設備の設置が容易
- 設置場所を抑えることが可能
安全性が高い
キュービクルは受電部や機器、回路が金属製の箱に保護されており、高い安全性を誇ります。
高圧受電設備がむき出しである場合、風雨や直射日光によって機器が著しく劣化したり、漏電や短絡によって故障したりするリスクが高くなります。一方で、キュービクルの場合はこれらのリスクを低減できるため、屋外に設置することが可能です。
また、箱がない場合、小動物等がケーブルを嚙みちぎってしまう恐れがあります。キュービクルの場合は、外箱で小動物の侵入を予防することができます。
加えて、仮に内部機器が故障し漏電が起こったとしても、外箱があるおかげで作業員が感電するリスクを低減できます。
このように、キュービクルは設備そのものの健全性維持・作業員の安全性確保において優れた設備です。
設備の設置が容易
設備の設置が容易であることも、キュービクルのメリットの一つです。
キュービクル自体の製造は工場内で完成させるため、現地で一から設備を組む必要がなく、現場作業を最小限にすることができます。
工場で製造されたキュービクルは、通常1〜3面ごとに分割した状態で運搬され、設置後に各面の接続を行います。その結果、開放型よりも工期や設置コストを効率化できます。
ただし、初めてキュービクルを導入する環境の場合、電路と基礎の構築が必要となることには注意が必要です。
設置場所を抑えることが可能
キュービクルは高圧受電設備一式をコンパクトな箱にまとめているため、設置場所を最小限に抑えることができます。屋外にも設置できるため、建物内のエリアを圧迫しないこともメリットの一つです。
まとめ
キュービクルの役割とその必要性について解説しました。要点をまとめると次のとおりです。
- キュービクルは、商業施設や店舗、工場、オフィスビル等、多大な電力を使用する施設に設置される高圧受電設備の一種である。
- 高圧受電設備は、高電圧(約6,600ボルト)で送電される電気を受け取り、施設内で使用可能な低電圧(100ボルトもしくは200ボルト)まで減圧する設備である。
- 電力使用量が50kW以上の施設は、高電圧(約6,600ボルト)の状態で電気を受け取る高圧受電契約を結ぶことが義務付けられており、使用可能な電圧(100ボルトもしくは200ボルト)に変換するためにキュービクルが用いられている。
- 高圧受電契約は、電力会社の設備である柱上変圧器を使用しないため、低圧受電契約よりも電気料金の単価が安くなる。
- キュービクルは開放型の高圧受電設備と比べ、外箱があることにより設備健全性・安全性に優れ、また設置が容易であることや、設置スペースを最小限に抑えられる点も魅力の一つである。
高圧受電契約を結ぶ施設には、キュービクルは欠かせない設備です。設置を検討している場合は、施設の規模や電力契約を確認しましょう。
キュービクルを設置したいけれど、何をすればよいかわからないという方は、電気工事業者やメーカー等、専門家に相談してみることをおすすめします。
当社小川電機株式会社は創業60年以上の歴史を誇り、これまでに多くの実績を積み上げています。状況に合わせたご提案ができることも大きな強みです。業者選びでお悩みの方は、小川電機株式会社にお気軽にご相談ください。
キュービクル
について
専門家にご相談頂けます
小川電機のキュービクル専門家に、設置費用の見積もり・トランス容量・設置スケジュールなど、何でもご相談頂けます。
※電話受付:平日 8:30〜17:30
※前田宛にお電話頂けるとスムーズです