キュービクルを設置したら必ず実施しなければならないことがあります。それが、法定の保安点検です。
キュービクルは高圧電流を扱うため、火災リスクをゼロにすることはできません。安全に運用するためにも、点検は絶対に実施しなければならないのです。
ただし、保安監督業務を外部に委託すると費用がかかります。この点を心配されている方は少なくありません。
今回は、キュービクル設置前に知っておくべき点検費用の相場について解説します。この記事を読むと、キュービクルの点検費用相場だけでなく、点検が必要な理由と点検を行わないリスク、必要な点検回数と依頼する業者選びのポイントがわかります。キュービクルの設置をご検討中の方や、点検費用の相場が気になる方は、ぜひご一読ください。
キュービクルの点検が必要な理由
キュービクルを設置したら、必ず保安点検を実施しなければなりません。その理由は2つあります。それが「法律」と「安全」です。まずは、保安点検が必要な理由について解説します。
- 法律によって義務付けられているから
- 安全性を確保しなければならないから
法律によって義務付けられているから
キュービクルは「自家用電気工作物」に該当します。自家用電気工作物とは、電力会社から高圧で受電する電気設備のことです。
自家用電気工作物を設置すると、「電気事業法」により、電気主任技術者による保安点検の実施が義務付けられます。さらに、キュービクルの保守は「消防法第8条」に基づく電気火災防止措置とも関連しており、漏電や過負荷による火災リスクを低減するための定期点検も必要です。つまり、キュービクルを設置したのに保安点検を実施しないと、法律違反になる危険性があるだけでなく、火災リスクも高まります。
なお、電気主任技術者を雇用していれば社員が点検することもできますが、電気主任技術者がいない場合や、雇用できない場合は「外部委託承認制度」を活用して保安監督業務を外部に依頼することになります。
外部委託承認制度とは、外部の電気主任技術者へ保安監督業務を委託できる制度のことで、一定の要件を満たす業者に依頼することができます。新しく人を雇うとなると少なくないコストがかかるため、多くの事業者は外部委託承認制度を活用してキュービクルの保安監督業務を外注しているのが実情です。
安全性を確保しなければならないから
キュービクルは高圧電流を扱うため、電気火災のリスクが存在します。また、漏電や感電の危険性もあるため、安全性の確保が必須です。そういった観点でも、キュービクルの点検は重要です。保安点検を実施して、リスクを少しでも軽減していくことが求められるのです。
なお、点検をしないことで発生する可能性のある事故については、後述します。リスクを理解するためにもご一読ください。
キュービクル点検にかかる費用
キュービクルの点検を外部委託すると、費用がかかります。ここで気になるのが、点検費用の相場でしょう。目安となる相場は次のとおりです。
受電設備容量 | 月額 |
---|---|
100KVA | 9,000円~11,000円程度 |
200KVA | 12,000円~17,000円程度 |
500KVA | 20,000円~28,000円程度 |
※参考
上記の費用には、月次点検と年間点検だけでなく、遠隔監視や緊急出動、各種書類の作成費用なども含まれています。ただし、点検費用はキュービクルの容量や業者によって違いがあるため、相場はあくまで1つの目安としてください。
適切な業者に依頼するには、依頼前には打ち合わせを行ったうえで見積もりを取るようにしてください。打ち合わせ時には、点検で異常や故障が見つかった場合の修理や交換費用についての確認も忘れないようにしましょう。
キュービクルを安全に使用するために必要な点検回数
キュービクルを安全に使用するためには、毎月の月次点検と、1年に1回の年次点検を実施しなければなりません。ただし、絶縁監視装置が付いている場合は、一定の安全性が確保できていると判断されるため、毎月ではなく隔月の保安点検が認められています。毎月行う場合も、隔月で行う場合も、月次点検の内容は同じです。ここでは、それぞれの点検内容について解説します。
月次点検
毎月、もしくは隔月間隔で実施するのが月次点検です。基本的な点検内容は次のとおりです。
外観点検
- キュービクル全体に損傷がないのかの確認
- 開閉器・変圧器・配電盤・制御盤・外箱・接地装置などの外観確認
- 各部品の劣化や損傷の確認
- 周辺に危険物がないのかの確認
漏洩電流測定
- 電流が漏洩していないかの確認
電圧・電流測定
- 配電盤の電圧・電流測定
月次点検は、電流が流れている状態で実施します。そのため、比較的簡単な点検であり、点検日だからといって特別な対応が必要になるわけではありません。そのため、周知する必要がないと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、点検作業はキュービクル周辺で行われます。スムーズに点検を進めるためにも、施設内で働く人には、キュービクル周辺に近づかないように周知しておきましょう。
年次点検
年次点検は、月次点検の内容に加え、より専門的な検査を実施します。そのため、複数名で実施することが一般的です。年次点検における基本的な点検項目は次のとおりです。
- 外観点検
- 観察点検
- 絶縁抵抗測定
- 継電器動作試験
- 漏洩電流測定
- 電圧・電流測定
- 保護装置動作試験
年次点検は、キュービクルの運転を停止した状態で行わなければなりません。キュービクルの運転を停止すると、電気を使用することができなくなるため、あらかじめスケジュールを組んでおく必要があります。
特に、工場などの場合は製造ラインが停止することで業務に支障をきたす場合があるため注意が必要です。無理のないスケジュール作成のためにも、早めに予定を組んで備えておくことが大切です。
キュービクルの点検を行わないことによるリスク
保安点検を行わずにキュービクルを使用することは非常に危険です。ここでは、キュービクルの点検を行わないことで大きくなる5つのリスクについて解説します。それぞれのリスクと危険性を理解して、対策を考えておきましょう。
- 停電事故
- 感電
- 火災
- 電気代の高騰
- 波及事故
停電事故
キュービクルの点検を実施しないと、停電が発生するリスクが高くなります。なぜなら、外箱の損傷に気付かない可能性が高くなるからです。
キュービクルの外箱が損傷して穴が開いてしまうと、雨水が内部に侵入して停電を引き起こすことがあります。電気が使えないと、業務に大きな支障をきたすため、これは非常に大きなリスクです。
また、商業施設の場合は急に停電すると、利用客が怪我をしてしまう危険性もあります。停電は、従業員やお客様の安全に関わる大きなリスクになると認識しておいてください。
感電
保安点検を行わないと、漏洩電流が発生するリスクが高まります。
漏洩電流とは、絶縁不良や機器の故障などにより、電流が本来流れるべき経路以外に流れてしまう現象のことです。これにより、設備に触れた人が感電する危険性が生じます。
感電事故は命に関わる非常に深刻な事故につながるため、漏洩電流を早期に発見して対処することが重要です。
月次点検を実施していれば、漏洩電流測定によって問題を早期に発見でき、感電のリスクを低減することが可能です。万が一のことが起こってからでは手遅れになるため、必ず定期的な点検を実施しましょう。
火災
保安点検を実施しないリスクの一つに、漏洩電流が原因で発生する火災があります。
保安点検を実施しないと、漏洩電流に気付くことができません。漏洩に気付かないままキュービクルを使用していると、電気火災のリスクが高まります。
保安監督業務を行っていないがゆえに火災が発生したとなると、社会的な信用が失われるだけでなく、場合によっては事業を継続できなくなる危険性もあります。
毎月の月次点検を行っていれば、漏洩電流測定で異常を発見することができるため、早めに対処することで大きな事故を防ぐことが可能です。社会的な責任を果たすためにも、リスクを理解したうえで対策を実施しましょう。
電気代の高騰
保安点検を実施しないと、機器の劣化に気付くことができません。機器が劣化すると、変換効率が悪化して電力ロスが大きくなります。電力ロスが大きくなると、電力を無駄に消費してしまうため、電気料金を抑えることができなくなります。
波及事故
キュービクルが関係する事故で、特に気を付けなければならないのが波及事故です。波及事故とは、自社が設置したキュービクルの事故がきっかけとなり配電線が停止し、同系列の配電線を利用している周辺施設の電気設備を停電させてしまう事故のことです。
波及事故は周りを巻き込んでしまうため、損害賠償責任を問われることがあるため注意が必要です。波及事故は自然現象や故意、過失などが原因のこともありますが、設備の老朽化が主な原因だといえます。
そのため、適切な保安点検を実施すればリスクを抑えることが可能です。このようなことがわかっている以上、保安点検を実施して社会的な責任を果たさなければなりません。
キュービクル点検の業者を選ぶときのポイント
キュービクルを設置している多くの施設では、外部委託承認制度を活用して保安点検を専門業者に依頼しています。その際に重要なのが、依頼する業者選びです。
キュービクル点検の業者を選ぶ際には、費用だけでなく、実績やアフターフォローの内容を確認することが重要です。中には、保安監督業務をどの業者に依頼しても大差がないと思い、費用の安さだけで選ぶ方もいるかもしれませんが、安全性や対応力を考慮することが大切です。
実績
業者を選ぶ際に、絶対に確認しておきたいポイントがその業者の実績です。実績が多い業者は、多くの経験とノウハウを積み上げています。
経験があるからこそ、小さな異常にも気付きやすくなります。また、これまで積み上げてきたノウハウがあるため、異常を発見した際にも適切な対応が可能です。
リスクをゼロにできないキュービクルの点検だからこそ、多くの実績を持つ業者に依頼しましょう。
アフターフォローの充実度
業者を選ぶ際は、アフターフォローの充実度も確認するようにしてください。
いくら適切な点検を実施していても、リスクをゼロにできるわけではありません。トラブルは、常に発生する可能性があります。だからこそ、アフターフォローが充実した業者に依頼することが重要です。
業者の中には、トラブルが発生した場合の設備費用や施工費用を補償してくれるところがあります。また、トラブルが発生したときに、緊急メンテナンスによって対応してくれる業者もあります。そのため、万が一のことを想定しておくことが重要です。
もちろん、アフターサービスの内容は業者によって異なるため、依頼前に確認しておく必要があります。リスクをゼロにできない装置だからこそ、アフターフォローの重要性が高いといえます。万が一に備える意味でも、アフターフォローの充実度が高い業者を選びましょう。
まとめ
キュービクルの設置前に知っておくべき点検費用の相場について解説しました。
キュービクルを安全に使用するには、保安点検が欠かせません。また、法律によって点検が義務付けられているため、社会的な責任を果たすうえでも、必ず実施する必要があります。
ただし、依頼する業者は慎重に選ばなければなりません。なぜなら、業者によって点検費用やアフターサービスの内容に違いがあるからです。
中には、費用の安さだけで業者を選ぼうと考える方もいるかもしれません。しかし、本当に大切なのは、安全性を確保することです。費用だけで業者を選んでも、安全性が確保できなければ意味がありません。
小川電機株式会社は創業60年以上の歴史を持ち、これまでに多くの実績を積み上げてきました。キュービクルの設置工事や修理はもちろん、キュービクルの点検の実績も豊富です。万が一トラブルが起こっても迅速に対応することができ、キュービクルに関するすべてのことをお任せいただけます。
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