キュービクルについて調べていると、必ずと言っていいほど「トランス」という言葉が出てきます。中には、キュービクルとトランスの違いがよくわからない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この2つの違いを理解しておかなければ、適切なキュービクル設置ができないこともあるため注意が必要です。
今回は、キュービクルとトランスの違いについて解説します。今回の記事を読むと、キュービクルとトランスの違いだけでなく、トランス容量の基礎知識や増設や減設についても理解できます。キュービクル設置をご検討中の方は、ぜひご一読ください。
キュービクルとトランスの違い
トランスは、キュービクルと切り離せないものです。適切なキュービクル設置のためには、キュービクルとトランスの違いを理解しなければなりません。まずは、キュービクルとトランスの違いについて解説します。
トランスとは
トランスとは、電圧を上げたり下げたりする装置のことです。「変圧器」とも呼ばれ、キュービクルの部品の中でも大きな役割を果たします。
キュービクル内に配置される複数のコンポーネントの中でも、トランスは主要な機能を担っており、時に「キュービクルの心臓部」と称されます。
キュービクルとは
電力会社から供給される電気は非常に高圧であるため、ビルや工場でそのまま使用することはできません。ビルや工場で電力を使用するには、電圧を下げる必要があります。この役割を果たすのがキュービクルです。
このように聞くと、トランスと同じ役割だと考える方もいるかもしれません。しかし、トランスはあくまでもキュービクルの中にある部品の一つです。
キュービクル内には、トランスに加え、高圧受電設備や保護リレー、遮断器など、電力制御および安全確保のための高度な機器が組み込まれています。これらがすべて揃うことで、安全に電気を使用できるようになります。
変電設備がキュービクルで、キュービクルの中の主要な役割を果たす装置がトランスと覚えておきましょう。
キュービクルのトランス容量とは
重要な役割を果たすトランスには、複数の容量が存在します。この容量が、いわゆるトランス容量です。
トランス容量は、トランスの電力変換能力のことで供給できる電力の最大量を意味します。
施設や工場での電力需要に応じて、適切なトランス容量が選定されます。ここでは、トランス容量について解説します。
容量の違い
一般的に使用されるトランス容量には、次のような主要な規格があります。
- 100kVA
- 200kVA
- 300kVA
- 500kVA
トランス容量は、kVA(キロボルトアンペア)という電力単位で表されます。
なお、トランス容量の増減は、キュービクル全体の寸法や設置コストに影響を与えるほか、発生する騒音や振動、熱量も変化します。容量の大きさによって適した設置場所が変わる可能性があることは覚えておいてください。
トランス容量とキュービクル本体価格の関係性
トランス容量が変わると、キュービクルの大きさや本体価格も変わります。本体価格が変わるとなると、安いキュービクルを設置したいと考える方もいるかもしれません。
しかし、トランス容量は使用電力によって決まります。そのため、安いからといって適していない小型キュービクルを設置することはできません。
なお、設置するキュービクルは、専門業者が計算して適切な容量を算出します。
では、設置する施設に応じた容量は、どの程度になるのでしょうか?もちろん、状況や使用する電力量によって異なるため、正確に把握することは容易ではありませんが、ある程度の目安が存在し、下の表のとおりです。
使用される施設の例 | トランスの容量(合計) | キュービクル本体価格 |
---|---|---|
コンビニ、小規模店舗 | 100kVA | 200万円前後 |
中規模店舗、小規模工場 | 200kVA | 350~450万円 |
中規模工場、スーパーマーケット | 300kVA | 550~650万円 |
テナントビル(大規模)、製造工場、病院 | 500kVA | 1,000~1,200万円 |
先ほども解説したように、トランスの容量は、予想される最大負荷に基づき選定されます。消費電力の計算は容易にできるものではないため、まずは業者に相談して適したトランス容量を把握しましょう。
トランスの増設と減設
トランス容量は、想定される消費電力を業者が計算して決められます。しかし、状況によって消費電力が変わることも珍しくありません。では、消費電力が増えてトランス容量を超えた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
中には、新規のキュービクル導入が必要と考える方もいるかもしれません。しかし、新しくキュービクルを設置するには少なくない費用がかかるため、簡単にいかないのが現実です。
このような場合は、トランスの増設で対応することができます。ここでは、トランスの増設と減設について解説します。
キュービクルのトランス容量は自由に選べる?
消費電力が増える可能性を考慮すると、最初から大容量のキュービクルを設置すれば良いと考える方もいるかもしれません。しかし、トランス容量は施設内で使用する電力の使用量によって決まります。
つまり、トランス容量を自由に選べるわけではありません。過負荷を防ぎ、安全性を高めるためにも状況に応じて対応しなければなりません。
トランス容量の変更を検討するときとは?
ビルや商業施設などでは、入居している店舗が変われば使用電力も変わります。しかし、キュービクルのトランス容量はあらかじめ決められているため、必ずしも既存のキュービクルで対応できるとは限りません。
このような場合、トランス容量の変更が必要です。また、工場等の場合は新しい機械の導入により使用電力が増えることもあります。このような場合も、トランス容量の変更を検討しなければなりません。
では、どのようにトランス容量を変更するのでしょうか?主な方法は次の3つです。
- 古いキュービクルを残して増設する
- 新しいキュービクルに交換する
- キュービクルのトランスだけを交換する
トランス容量が大きなキュービクルを新しく購入するとなると、大きな費用がかかります。そのため、コスト効率を重視したトランス容量の変更を行う際には、トランスだけを交換するのが基本です。
なお、ここでは増設をメインに考えていますが、減設する場合についても同じように考えて問題ありません。
キュービクルを安全に使用するには、電気使用量に合わせたトランスを選ぶことが重要です。事故や故障を未然に防ぐためにも、増減設が必要なときは早めに対応してください。
キュービクルのトランスについて知っておきたい知識
トランスの交換を検討するときは、知っておきたい基礎知識があります。それが、次の4つです。
- トランスの寿命
- キュービクルの交換時期
- キュービクル交換の工事
- キュービクルを長く使い続けるための方法
増設を検討している場合は、寿命や交換時期に合わせることで、無駄な出費を抑えられます。また、寿命や交換時期を把握しておくことで、予算を組んで備えておくことができるので、それぞれの期間を覚えておきましょう。
トランスの寿命
トランスの寿命は、一般的に15年以上とされています。しかし、これはあくまでも1つの目安です。当然、必要なメンテナンスを怠っていれば、寿命は短くなる可能性が高くなります。
反対に、必要なメンテナンスを実施していれば、法定耐用年数(15年)を超えても使用し続けることが可能です。長く使い続けていくためにも、メンテナンスが大切であることを覚えておきましょう。
しかし、使い続けることができるからといっても、一般的な寿命を大きく超えて使い続けて問題がないというわけではありません。なぜなら、トランスには高電圧の電気が常に流れているからです。
使い続けられているからといって、必ずしも安全性が確保されているわけではありません。漏電や爆発事故などのリスクを下げるためにも、一般的なトランスの寿命は常に意識しておきましょう。
キュービクルの交換時期
先ほどは、トランスの寿命について解説しました。では、キュービクルの交換時期はどれくらいなのでしょうか?
キュービクルの交換時期は、部品の耐用年数でもある15年~が目安です。ただし、適切なメンテナンスを行っていれば耐用年数を超えても使用し続けられることも珍しくありません。
だからといって、耐用年数を大幅に超えて使用し続けると余計な電力が消費され、コストが膨らむ可能性があるので注意してください。
また、故障や事故の原因になる危険性もあるので、耐用年数を大幅に超えての使用は避けた方が良いでしょう。交換費用はかかっても、長期的に見れば省エネ効果が期待できるだけでなく、安全性を高めることにもつながります。
安全に使用するためにも予算を組んで、耐用年数ごとの交換を心がけてください。
キュービクルの交換は工事
キュービクルを交換する場合や、トランスを増設する場合は工事が必要です。ここでは、工事内容と工事期間について解説します。
一括りに「工事」といっても、いくつかのパターンが考えられます。主なものは次の3つです。
- 古いキュービクルを残しつつ、新しいキュービクルを増設する
- 新しいキュービクルに交換する
- 既設キュービクルのトランスだけを交換する
「1. 古いキュービクルを残しつつ、新しいキュービクルを増設する」場合と、「2. 新しいキュービクルに交換する」場合は、基礎を追加したりサイズ変更をしたりしなければなりません。そのため、工事期間は1週間から2週間程度かかります。
一方、「3. 既設キュービクルのトランスだけを交換する」場合、基礎工事は必要ありません。そのため、工事は1日から3日程度で終わります。
なお、トランスを交換する工事は半日程度で終わりますが、工事中は停電になるため注意が必要です。工場などでは生産計画に影響を与えることになるので、休日に行うなどの対策が必要です。
キュービクルを長く使い続けるための方法
キュービクルを安全に使い続けていくには、保安点検とメンテナンスが欠かせません。これは、法令により定められています。電気主任技術者による年次点検と月次点検を実施し、事業者へ報告しなければならないと法令により定められています。
なお、絶縁監視装置が設置されているキュービクルは、安全性が認められているため、隔月点検が可能です。月次と年次の主な点検内容は次のとおりです。
月次点検
- 漏電がないかの測定
- 受電盤と配電盤の電圧と電流測定
- 受電盤と配電盤のブレーカー温度の測定
- 非常用発電機の動作確認
その他にも、目視で開閉器などに異常がないか確認します。
年次点検
- 高圧ブレーカーの動作確認
- 絶縁抵抗の測定
- 異常個所が出た場合、電気系統から対象個所を切り離せるのか確認
- 蓄電設備の電圧、温度、比重の測定
- 非常用発電機の動作確認
なお、年次点検の場合は、安全のため敷地内を停電させなければなりません。そのため、早めにスケジュールを立てておく必要があります。
まとめ
キュービクルは、高圧の電気を建物や工場で使用できるように電圧を下げる設備であり、トランスはキュービクルの中にある電圧を調整する重要な役割を持つ部品です。
トランスには容量があり、代表的なものには100kVA、200 kVA、300kVA、500kVAの4種類があります。トランス容量は使用電力に応じて選ぶ必要があり、使用電力が増減した場合はトランスの増減設で対応することも可能です。
なお、キュービクルやトランスの寿命は一般的に15年~とされているので、事故やトラブルのリスクを軽減するためにも、交換時期は目安として覚えておいてください。
ただし、保守点検やメンテナンスを怠ってしまうと、一般的な寿命よりも短くなる危険性があるので、定期的な保守点検とメンテナンスは必ず実施しましょう。
保守点検やメンテナンスを依頼する業者選びは慎重に行うようにしてください。事故や故障を未然に防ぐうえでも点検とメンテナンスは非常に重要になるため、実績と経験がある業者に依頼することが重要です。
小川電機株式会社は、創業60年以上で多くの実績と経験を積み上げてきた企業です。点検やメンテナンスはもちろん、修理や交換にも対応しているため、キュービクルに関することをすべてお任せいただけます。点検やメンテナンス業者をお探しの方は、まずは小川電機株式会社へご相談ください。
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