この記事ではキュービクルのトランス容量ごとの種類や選定ポイント、計算法についてを詳しくまとめています。
長年キュービクルを扱ってきた実績のある小川電機株式会社の前田さん(一級電気施工管理技士)に、「キュービクルのトランス容量について事業者が知っておくべきこと」というテーマで話を伺い、プロの目線からご回答頂いた内容を記事にしています。
「変圧器」「トランス容量」とはなにか
変圧器とはキュービクルに内蔵されている機器の1つです。変電所から電流へ流れる6,600V(ボルト)の電圧を、事業所で電気として利用できる220Vの電圧に変電する役割があります。
キュービクルを設置すると、6,600Vのまま電線から電気を受電することになるので「高圧受電設備」となります。
またトランス容量とは、変圧器(トランス)の容量のことです。容量と一口にいっても種類は様々ですが、100kVA、200kVA、300kVA、500kVAの4種類が主流です。
トランス容量ごとの違いまとめ
この項目では、トランス容量ごとの変圧器の違いを「費用」「トランスの大きさ」「キュービクルの大きさ」「騒音」「振動」「発熱量」など項目に分けて紹介します。
トランス容量ごとの違い1:費用
規模(合計) | 施設例 | 本体価格 |
---|---|---|
100kVA | コンビニ、小規模店舗 | 200万円前後 |
200kVA | 中規模店舗、小規模工場 | 350~450万円 |
300kVA | 中規模工場、スーパーマーケット | 550~650万円 |
500kVA | テナントビル(大規模)、製造工場、病院 | 1000~1200万円 |
トランス容量(合計)ごとにかかる費用の目安は、上記の表の通りです。
注意点としては、例えばトランス容量が200kVAの場合、200kVAを1つ設置するのか100kVAを2つ設置するのかによって値段が違うため、一概にトランス容量ごとに値段が決まっているわけではありません。
ご希望の設置方法の場合、大体どのくらいの費用感になるか知りたい方は、以下フォームからご気軽にお問い合わせください。
トランス容量ごとの違い2:変圧器の大きさ
変圧器の大きさは、トランス容量に比例して大きくなります。
例えば10kVAの変圧器の大きさはW350mm・D450mm・H600mmほどですが、500kVAの変圧器だとW1150mm・D700mm・H1300mmほどの大きさになります。
トランス容量ごとの違い3:キュービクルの大きさ
基本である二面体だと、800mm(横)×800mm(横)×1800~2000mm(奥行き)ほどの大きさです。ここからトランス容量に合わせて3、4、5面体と増やしていくことになります。
トランス容量ごとの違い4:騒音の大きさ
騒音はトランス容量に関わらず発生します。住宅地に設置する場合は音が気になる方がいるかもしれませんが、空気穴の構造上、完全に防音することは不可能です。騒音については資料をメーカーが作成してくれているはずです。
トランス容量ごとの違い5:振動
振動ついても、騒音同様トランス容量の大きさに関係なく発生します。
あまりに気になる場合は、対策としてトランスの下に「防振ゴム」の設置を行い振動を軽減させますが、その分費用が追加でかかります。
トランス容量ごとの違い6:発熱量
発熱の量は、キュービクルが安全に使える年数に影響します。
一般的にトランス容量が大きいほど発熱量も多くなりますが、トランス容量が大きいものほど「冷却装置」など発熱を抑えるための仕組みが備わっているためそこまで気にしなくても大丈夫です。
唯一故障した場合だけは気をつける必要がありますが、故障自体は毎月の定期点検で、担当者が早期に発見できるはずです。
キュービクルのPF・S型とCB式の違い
名前 | 保護装置 | トランス容量 |
---|---|---|
PF・S型 | ヒューズ | 300kVA以下 |
CB型 | 遮断機 | 300kVA以上 |
「過電流」など異常事態が起きたときには、回路を保護する設備がキュービクルには備わっています。保護装置の種類によって「PF・S型」と「CB型」の2種類があります。
PF・S型
保護装置に高圧負荷開閉器と高圧ヒューズを使用しているキュービクルは「PF・S型」と呼ばれ、短絡が起きた場合にはヒューズが溶断されることで回路を守るという特徴があります。
トランス容量300kVA以下の受電であれば採用でき、設置面積やコストを押さえられるメリットがあります。
ただし高圧ヒューズは使い捨てなので、一度溶断されたら新しいものに取り替える必要があります。
CB型
一方、保護装置に高圧遮断器が使われているキュービクルは「CB型」と呼ばれ、短絡の際には遮断器によって事故電路が切り離されて回路を守ります。300kVA以上のトランス容量に採用されています。
高圧遮断器は使い捨てではなく繰り返し使えるので、事故が起きた際にも取り替えが必要ありません。
なお、トランス容量が「300kVA」のキュービクルの場合は、「PF・S型」と「CB型」どちらも採用が可能なので、お客様の判断で選ぶことができます。
適切なトランス容量を自分で概算する方法
設置するキュービクルのトランス容量を決めるには、自身の事業所がどの程度電力を使用しているのか把握する必要があります。
正確に計算する必要はありませんが、ある程度計算できるようになっておくと便利なので解説をします。
単位の解説
トランス容量の計算をするにあたって必要な単位は、「V(ボルト)」「A(アンペア)」「VA(ボルトアンペア)」「W(ワット)」です。
電力に関する基本的な単位ですが、それぞれどのような単位か解説します。
電気の流れを「ホースから出る水」に例えると、電圧はホースを押さえる指の強さ、電流は水の量、電力はホースから出る水の強さといったイメージになります。
V(ボルト)
V(ボルト)とは「電圧」を表す単位です。指でホースの口を狭めると水圧が上がるように、電圧が強いほど電気は強く流れることになります。
A(アンペア)
A(アンペア)は「電流」を表す単位です。単純に流れる「電気の量」と理解していただいて大丈夫です。
VA(ボルトアンペア)、W(ワット)
VA(ボルトアンペア)やW(ワット)は電圧と電流を掛け算した値のことで、「電力」を表す単位です。
「電気を押し出す圧力」×「電気の量」なので、電力は「電気の強さ」といったイメージになります。
VAとWは厳密には異なる意味がありますが、キュービクルのトランス容量を計算する上では同じものと考えて問題ありません。
用意しておくもの
計算には出力電圧(V)と出力電流(A)の値を使います。電気料金の明細書に記載されていますので、理想は直近1年分の明細書をご用意頂けるとよいかと思います。
WやVAが直接明細書に書かれている場合もあります。その場合、以下で説明する計算は不要となります。
計算式
出力電圧(V)と出力電流(A)の数字が確認できたら、以下の計算式に当てはめることで適切なトランス容量を把握することができます。
単相:容量(kVA)=出力電圧(V)×出力電流(A)÷1000
三相:容量(kVA)=出力電圧(V)×出力電流(A)×√3÷1000
注意点として、計算した値から少し「余力」をもたせることが重要です。
トランス容量ごとのキュービクル設置にかかる費用
規模 | 施設例 | 本体価格 |
---|---|---|
100kw | コンビニ、小規模店舗 | 200万円前後 |
200kw | 中規模店舗、小規模工場 | 350~450万円 |
300kw | 中規模工場、スーパーマーケット | 550~650万円 |
500kw | テナントビル(大規模)、製造工場、病院 | 1000~1200万円 |
キュービクルの本体価格は上の図のとおり、トランス容量ごとに異なります。設置にあたっては本体価格以外にもかかる費用がありますので、詳しく把握したい方はこちらの記事をご確認ください。
キュービクル設置のスケジュール
見積もりを依頼する業者によって多少の違いはありますが、小川電機社にお見積もりをいただいた場合のスケジュールは上記となります。
実際に現場調査をした上で内訳と見積もり費用をお客様にご提案いたします。内容に合意していただけたら工事日程を決定という流れになります。
「小川電機株式会社」について
今回取材にご協力頂いた小川電機株式会社は、設立から50年以上続く電材総合商社です。
キュービクルをはじめ様々なオフィス家電、マンション大型家電など、全国に強い流通ネットワークを持っています。
会社名 | 小川電機株式会社 |
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会社設立 | 1963年(昭和38年)3月21日 |
事業内容 | 電設資材・住設機器・家電製品の総合卸商社 |
所在地 | 大阪本社:〒545-0021 大阪府大阪市阿倍野区阪南町2丁目2番4号 東京支社:〒108-0023 東京都港区芝浦2-15-16 田町KSビル2F 他多数 |
資本金 | 90,000,000円 |
代表者 | 代表取締役会長 小川 能理夫 代表取締役社長 小川 雄大 |
従業員 | 365名(グループ計) |
ホームページ | https://www.ogawa.co.jp/ |
「電気施工管理技師」「電気工事士」など社員の専門資格取得も積極的に推進しており、キュービクルに関しては国内トップクラスの知見を持つ企業です。
中古キュービクルの設置を検討されている、選び方に不安をお持ちの方はぜひ一度小川電機にご相談ください。
この記事の監修者:前田恭宏さん
氏名 | 前田恭宏 |
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経歴 | 小川電機勤務歴35年。年間15~20基、過去5年で100基以上のキュービクル取扱実績有り。1級電気施工管理技士。 |
まとめ
キュービクルのトランス容量は、用途にあったものを選ぶことが大切です。
用途や使用期間を考慮して容量を決めないと、設置完了後に容量を増やす必要がある場合にさらなる手間や費用がかかってしまうからです。
小川電機ではキュービクルの交換工事はもちろん、設置を検討している方のご相談も無料で受け付けております。
キュービクルに関して何かご不明点があれば一度お気軽にご連絡ください。